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第13話 奇跡みたいな日常。

「優磨君、ありがとう」 「何でお礼?」 「んーー。何となく、言いたくなったんだ」 「ふふっ、変なの。あのさ、一つ聞いても良いかな?」 「良いよ、何?」 「真咲君って、今、好きな人いる?」 「ど、どうして、そんな事聞くの?」 「んーー。何となく、聞きたくなったんだ」 いやいや、何となくで聞く事じゃないと思うよ。俺が好きなのは君だよ。なんて言える訳がないし、どうしよう。 「突然過ぎた?」 「うん。」 「そっかぁ、じゃあ、初恋は? それなら聞いても良い?」 初恋かぁ、幼稚園生の頃のはカウントに入るのかな? それを抜かしちゃうと、優磨君になってしまうし…… 「幼稚園生の時だよ。でも、ケンカした切り会えていないけど」 「ケンカ? どんな?」 「ユウちゃんって子が同じクラスにいて、その子の誕生日プレゼントに母さんが編んだマフラーと俺が描いた似顔絵をあげたんだけど、こんな物いらないっ!!って凄い剣幕で怒られて、マフラーと似顔絵をゴミ箱に捨てらちゃったんだ」 「……誕生日プレゼント?」 優磨君が複雑な表情をしている。似顔絵をプレゼントしたのがマズかったのかな? 「何度も描き直したから、一ヶ月遅れちゃったけどね。目の前でビリビリに破かれてショックだったなぁ。その日の夜に熱を出して寝込んでしまって数日後に登園したら、その子が転園してて、それ切りってわけ」 「真咲君はその子が引っ越す事知ってたの?」 「まさか!! 知ってたら笑顔でプレゼント渡したりなんてしないよ。あ……じゃあ、もしかして」 「うん、お別れのプレゼントだと勘違いしたんじゃないかな」 「ああっ!! だから怒ってたのか!!」 「そうだと思うよ。その子の勘違いだね」  そう言ったきり、優磨君は黙り込んでしまった。余りのヘタレっぷりに呆れたのかも知れない。初恋の話なんてするもんじゃないな……  彼の隣に俺がいる。そんな奇跡みたいな日常が訪れてから数ヶ月が過ぎた。少しでもマシな自分になりたくて、ダイエットをし勉強も励んだ。 同じ高校に進学し体型も標準になった頃、俺に対する周囲の態度が変わった。  見た目が少し変わっただけなのに、こんなにも違うものなのかと正直驚きだ。  人と上手く付き合う術も身に付けた。俺の所為で彼が奇異の視線に晒られなくなった事が何よりも嬉しい。  チビだった俺は、彼の身長を頭一つ分追い越していた。

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