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第8話

 どうりでいつも雪華と抱き合った後は強烈な疲労感に襲われると思った。激しく交わっている自覚もあったからそのせいかと思っていたらなんてことない。生命力を取られていただけだった。 「道理でめちゃくちゃ疲れると……」 「ごめんなー。でも美味しくいただいているから」  ハートマークがつきそうな甘えた声で言われたら「やめろ」と言えるはずもなく。気持ちよさに負けてしまうのは自分のせいだから仕方ない。 「それならいいです。せいぜい味わってください」  観念した声色に雪華は飛んできて、ちゅうっとホッペにキスを落としていく。 「大好きだよ、晃成。いい子だな」 「会った時よりツヤツヤしているなぁとは思いましたが、やっと腑に落ちました」 「だって気持ちいいからたくさんしたいし、それで精気ももらえて俺的には万々歳なんだよ」  あ、と思い当たった。 「もしかして俺に人間成分を残したのってそれですか?」  なぜ完全な雪男にしなかったのか。(仮)の存在がずっと不思議だった。雪華は悪びれもなく肯定し「その通り!」と笑った。 「人間の精が一番うまい」  冗談なのか本気なのか、雪華の言葉は軽い。 「そうですか」  大事なものほどどうでもいいことから始まるって聞くけど、まさにそれ。晃成は呆れたように雪華を見たけど、彼は鼻歌を歌いながら再び料理に取り掛かっていた。  心配をよそに作られた鍋はものすごく美味しかった。クタクタに煮えた野菜もうまみが出ている魚介類も、お店で食べる鍋かと思うくらい上品な味付けで染みわたっていく。 「雪華さん、やればできるじゃないですか」  おかわりをしながら褒めたたえるとまんざらでもなさそうに顎を突き出している。

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