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第11話

「かしこまりました」  細は跪き忠誠を誓う動きをしてから晃成を一瞥し、姿を消した。誰もいなくなって思わず深い呼吸をしてしまった。緊張していたのだろう、手汗もひどい。 「ありがとう、雪華さん」  ホっとした笑みを浮かべると雪華は不思議なものをみるような顔つきをし、ふ、と表情をやわらげた。 「俺はお前に甘いな」  その顔は晃成が見慣れたいつもの雪華のもので、胸をなでおろした。  普段忘れているけれど、雪華の本性は人間ではなく冬を統べる王様なのだ。彼の言葉一つ、動き一つで運命が動く。  細を前にした雪華はジャージ姿とは思えない威厳や畏怖、誰も逆らえないオーラを纏っていた。命を握られていると恐怖さえ感じた。 「雪華さん……」  後ろから抱き着くと雪華は目を見開き、腰に回した手に手を重ねた。 「どうした珍しいな。お前からくるなんて」  触れる髪にキスを送る。こうして二人きりの時は優しくて甘いのに。この姿を見ることが出来るのは晃成だけ。このままでいてくれれば。誰にも邪魔されず、二人きりの静かな場所で。  天気は下降を続け暴風雪の日は続いた。窓からの景色は白一色でガタガタと家中を揺らす。  コタツの中でゴロゴロとしている雪華は相変わらずテレビに向かって笑いこけ、暇になると居眠りを始める。  この吹雪は細の作り出しているものだ。雪を吹かせ外界から人が近づかないよう防壁を作ると教えてくれた。久しく太陽も見ていない。  大人しくしていると約束もしたし晃成もコタツへと足を突っ込んだ。ぬくもりに眠気が襲う。  今はこうやって雪に隠されているけれど、これからどうなっていくのだろう。あの調子じゃ簡単に諦めるとは思えない。  持てあました時間は悪い方へと考えを向かわせる。腕枕をしながらズブズブと思考の海に沈んでいく。

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