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第12話
「雪華さんといつまでいられるのかな」
あまり考えないようにしていたけど、王として君臨している雪華と人間成分の残った晃成では命の長さは全然違うだろう。今は物珍しいこの暮らしを楽しんでいたとしても、いつ飽きて他に目移りするかもわからない。
雪華に仕えるものたちが晃成をよく思っていないのも不安の種だ。もしかしたら消されるのかもしれない。まあそれならそれでいい。単なる気まぐれが覚めた後、中途半端に捨てられるくらいなら消えたほうがいい。
ぬくもりのなかで雪華の身体に触れた。せめてそれまでは二人きりで笑って暮らしていたい。
「食材が尽きました」
吹雪が続いて数週間がたっていた。積もった雪はすでに身長くらいの高さになり窓も覆った。玄関の前だけは雪をかいたのでなんとか解放されているが、放っておけば家ごと閉ざされてしまうだろう。まるでセルフ兵糧攻めだ。
「食べるものがありません」
家から出られないということは買い物にも行けないということだ。細のような使いの者たちが持ってきてくれるわけでもない。そろそろ限界だと訴えると雪華は驚きに目を見開いた。
「どうりでミカンがないと思ったんだ……」
「ですよね、あれだけ食べればいくら箱で買ったところでなくなります」
晃成の訴えに雪華は腕を組んだ。
事の発端もこんな吹雪の日だった。油断はならないと家から出ないようにしていたが、さすがに食材がないのはピンチだ。
さんざん悩んでようやく重たい口を開く。
「やむを得ない。行くか」
軽めのコートを羽織ると雪華は一足先に外へと出ていった。
慌ててダウンコートをまとった晃成が後に続くと、雪華はふっと息をふきかけ、道を拓かせた。みるみる雪が両サイドに避けていく。
「おお。歩けるようになりましたね」
いつ見てもおもしろい。雪華が足を進めるたび雪は自ら進んで道をあける。まるで下々の者たちがひれ伏す白絨毯の上を堂々と歩くキングそのもの。
「便利ですね」
数歩後ろをついていきながら晃成はこの光景に目を輝かせた。昔見た映画のようだ。あれは杖をさすと道が開いたんだったか。目の前がパーッと拓けていく光景は気持ちがいい。
どんな場所でも雪華がいれば移動に苦労しないなと言うと、雪華は不満げに振り返った。
「人を道具扱いすんなよー」
そう言いながらも雪華も気持ちよさそうに雪と戯れている。自分の眷属だから可愛いのだろう。甘えるように落ちてくる結晶を眺めては愛おし気に瞳を細めている。
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