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第13話

「しばらく触れてなかったなあ」  降る雪の一片でも雪華にとっては大事な身内なのだろう。触れては消えていくはかない命を大切そうに慈しむ。優し気な目元に晃成も思わず微笑んだ。  人間には考えられない速さでふもとのスーパーにつくと、雪華はキラキラと瞳を輝かせてお菓子コーナーやアイスケースを覗き込んでいる。食べ物がなくても生きていける雪華にとって食事は晃成に合わせてのごっこ遊びらしい。本当に美味しいのはごはんよりも甘いデザートだと言い張る。  献立を考えながら野菜や肉をカゴに入れていく晃成の目を盗んで次々と嗜好品が仲間入りする。 「ちょっと雪華サン、こんなにお菓子ばっかり食べたら太りますよ。ただでさえゴロゴロしているんだから」  晃成の小言に「セックスすればその分消費できるから問題ナシっ」と笑いかける。すれ違ったお客さんがギョッとしたように振り返る。 「こんな場所で! そんなハレンチな言葉を出さないでください」  慌てて口を押えると手のひらをベロリと舐められた。真っ赤になってひっこめようとする手を捕まえてもう一度指の股に舌を這わす。 「誰も見てないよ」  高ぶりを愛するようにベルベットの柔らかさが動く。晃成は全身を真っ赤に染めた。これくらいで感じてしまう自分も情けないけど、やっぱり視線が集まっている気がする。チラっと辺りを窺うと慌てたように人が避けていった。やっぱり全部見られている。 「雪華さん!!」  引っ込めようとすると最後に指先にチュっと音を立てるキスを送り、やっと離してくれた。手のひらがジンジンと敏感になっている。 「ちょっとトイレに行ってくるので……カート、見ていてください」 「はーい。ごゆっくりー」  笑いを含んだ声色にさらに頬を染めた。しっかりと興奮を現した下半身がばれている。俯きながらトイレの個室へと駆け込んだ。ズボンを下げると勢いよく飛び出してくる。 「ほんとにあの人は……っ」  先端はいじらしいしずくを零し臨戦態勢だ。こんな場所で行為に及ぶのも憚られ、むりやり用を足した。もう少し待てば通常に戻るだろう。  ため息をつきながら腰を掛けていると、ドアが開く音がしてどやどやと人が入ってきた。数人いるのだろう賑やかになる。 「ついに出たみたいだぞ」とその中の一人が興奮しきった声を上げた。

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