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第14話

 閉まっているドアを気にすることなく会話は続く。 「マジか。今日こそ捕まえたいよな」 「一気に再生数上げるぞ。そのあと売っちまえばプラスの収入になるだろ」  卑しい笑い声に冷たい汗が流れていく。  もしかして動画の投稿主なのか? やはり諦めていなかったのだ。用が終わると彼らはトイレから出ていき、残された晃成も慌てて個室を出た。  とにかく雪華に報告しなければ。何も知らずにいたら雪華まで一緒につかまってしまう。なんとかして家へと帰るルートを考えて彼らに見つからないようにしなければ。  満足そうにカートにジュースを積み込んでいた雪華を捕まえると、手短に今あったことを報告した。フンフンと聞いていた雪華は最後にチョコレートをカゴに突っ込むと、「しょーもなー」と吐き捨てた。 「こんな天気の日にわざわざお疲れ様ですって言っとけ」   大量の食材を積んだままレジに並んだ雪華は「それよりはやくコタツに入りたい!」と悲壮な表情を浮かべた。そこまで彼を虜にするコタツってすごいと思いつつ、不安を隠せない晃成に雪華は鼻で笑った。 「あんなくだらない人間なんかほっとけ」  放っておいていいのだろうか? 晃成自身がどうなろうとも平気なのだが、雪華との生活を捨てたくはない。このまま穏やかに暮らしていたいだけなのに。  外の出るとまたもや暴風雪で自分の足元さえ見えないくらいの雪が吹き荒れていた。いつの間に降らせていたのだろう。 「晃成、ちょっとおいで」  雪華は着ていたコートに晃成を包むと、強く抱きしめた。手に持っていた袋がガサリと音を立てる。 「やっぱでかいからはみ出すな」 コートからはみ出す晃成を笑う雪華はどこでもマイペースだ。人前だろうがどこだろうが自分の欲求に正直だ。 「人前では恥ずかしい」  と言いかけた瞬間、景色が変わっていることに気がついた。すでにスーパーは跡形もなく、自分たちの家が見えている。次の瞬きで自宅の玄関の前にいた。    人って驚くと真顔になるんだな、と晃成は知った。  だいたいのことでは驚かないけど、さすがにこれは。何が起きたのか理解しきれない晃成を置いて雪華は玄関へと姿を消した。荷物をもって慌てて追いかける。 「雪華さん、こんなことまでできるんですか」  すでにコタツの人となっている雪華は「そう、できるの」とこともなげに言う。 「お前が不安そうだからちょいっとがんばった。褒めて」  普段はぐうたらな雪華に与えられた優しさにジーンと胸をときめかせた。なんだかんだ言って、愛されているのかな俺、と思う。 「ありがとう」 お礼を言うと、それだけかと催促される。誘われて臨めばグダグダになるまで搾り取られた。動けなくなる朝を迎えて、窓から太陽の光が差し込むのを見て、この時間が続くようにと願った。

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