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第15話

 春が近づいてきて、雪に覆われた暮らしも少しずつ終わりを告げていく。  まだまだ雪深い山奥だけど日差しは違うものだし、太陽がよくあたる場所からは地面が顔を出してきた。フキノトウの小さな頭が覗いている。 「いいお天気ですねえ」  ポカポカとした陽気に晃成は頬を緩ませた。冬のほうが体的にはあっていても、やっぱり春のぬくもりは気持ちがいい。猫のように体を伸ばした雪華を乗り越えてパチっとコタツのスイッチを消した。抗議の声が上がる。 「消すなよ。まだ寒いんだから!!」  指先一つをチョイっと動かすだけで空はどんよりと曇り、小さな雪が舞い降りてくる。さっきまでの春めいた空は瞬く間に冬に巻き戻った。冷え込んでくると満足したように丸まってしまった。 「勝手に天気を変えないでください」  せっかく気持ちのいい暖かさだったのに。  雪華は知らん顔を決めて大きな欠伸をした。この様子だとそのままお昼寝するつもりだろう。 「ちょっと出かけてきますね」  吹雪が続いたせいで家に閉じこもり、体もなまってきている。声をかけると雪華は腕だけ出してフリフリと手を振る。  外に出ると粉雪が舞い散っていたが、晃成にはへっちゃらだ。  それより彼らの動向が気がかりだった。他に興味が移り諦めてくれればいいが、雪解けを待っていたなら事だ。様子を見に行こうと思った。  早足で雪山を駆け巡る。吹雪の間はみるみる消えていく足跡も今は深く残っている。人間の足跡は今のところどこにもないようだった。人の気配もない。  いい加減諦めたのかと安心しかけた時、近くを何かが横切るのが見えた。暖かくなって目覚めた動物たちならいいのだが、確認しようと近寄る。  人間だった。  数人のかたまりが頭に小型のカメラをつけ、キョロキョロとあたりを見渡している。何一つ見過ごさないと真剣な顔つき。諦めていなかったのだ。かち合ったら面倒くさいことになると踵を返した時だった。 「見つけたぞ!」  大きな声が響いた。いくつかのチームに分かれていたのだろうか。足跡を追いかけるように走ってくる人間たちの瞳孔は開き狂気じみた顔で晃成を捕えている。 「マジもんだぜ」

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