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第16話

 興奮しきった声に「違う!」と叫んだけど聞き入られなかった。 「捕まえるぞ!」  血気盛んな彼らは晃成の言葉に耳を貸さず包囲していく。 「話を聞いてくれ」  叫びも虚しく、取り押さえられそうになり思わず逃げてしまった。欲望にかられた彼らは晃成を捕まえることしか頭にないようにギラギラと瞳を輝かせている。  執拗に追いかけてくるのをまこうとしても人数の多さに次第に囲まれ始めた。 「そっちにいったぞ!」 「待て、バケモノ!」  どちらがバケモノなのだろう。誰にも迷惑をかけず隠れた場所で穏やかに暮らしている自分たちを、カメラで隠し撮り、捕え、売りさばこうとしている奴らと。 「もうやめてくれ!」  走りながら叫んだ。普通の人間じゃなくても、誰かに危害を加えるつもりなんてない。ただ、雪華として、晃成として存在している。それがいけないことなのか。 「俺たちは誰にも危害を加えない!」  晃成の叫びは彼らに火をつけることになってしまった。 「さっきから何かしゃべってるぞ。言葉もわかるのかもしれない!」 「これは高く売れるぞ」 「たち、ってことは他にも仲間がいるのか。探せ」  冷静さを持たない人間の欲ほど怖いものはない。奪えるものは奪い、さらに価値のあるものを手に入れようとする。自分の甘さに晃成は唇をかんだ。  雪華や細に任せておけばよかったのだ。中途半端な自分がいつだって問題を大きくしてしまう。  雪華だけは守らなきゃ。彼は危険を承知で人間の暮らしごっこをしてくれているのだ。細の言う通り、お城に戻れば誰にも見つからず静かに暮らせているのだろうに。晃成がいるから雪華はあの家に留まっている。  雪華がくれた命を彼のために使いたかった。  家とは反対のほうへとひたすら走った。もうここがどこで、どうやったら帰れるかもわからないけど、雪華から彼らを離したい一心で。 「止まらきゃ撃つぞ」

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