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第17話
映画やドラマでしか聞かないセリフが背中に届く。まさかとおもった瞬間、二の腕に熱いものが走った。真っ赤な鮮血が雪の上に散る。そのそばに赤い小さな球が落ちていた。BB弾のようだった。
「バケモノの血も赤いんだな」
誰かの興奮した声に晃成は血の気が冷えていくのが分かった。晃成の零した血にカメラが向けられている。
生き物に流れる命の証でさえ、投稿の対象になり世界中に拡散されていく。
面白いか、と声に出していた。
「血を流す俺は面白いのか」
人間も他の生き物だって命があるから生きているのだ。まったく違う生命体であっても、尊重されるべきもの。それがあまりにも軽んじられ、晃成は吠えた。
「俺はバケモノじゃない!」
足を止めて振り返ると後を追ってきた人間たちも慌てたように足を止めた。逃げる弱者を追うのは楽しくても向き合うと恐怖にかられるらしい。ひきつった顔を見せながら銃先を晃成に合わせている。
「撃てばいいだろ。面白いんだろ」
怒りで頭の中は燃え滾っている。もしかしたら話し合えばわかるのかも、なんて、甘い見通しをした自分がおかしくなる。彼らが欲しているのは動画の再生回数と歪んだ承認欲求だけなのだ。
「俺は人間だ。あなたたちと変わらない」
晃成の叫びに一人がさも可笑しいとばかりに笑い声を立てた。それに釣られるように笑い声が広がっていく。ゲラゲラと笑う醜く歪んだ表情に背筋が凍った。
「お兄さんが人間だとしてもさ、それっぽくて山ん中に住んでれば視聴者は勝手にジャッジしてくれるんだよ。拡散され広がっていく。俺たちは売れればそれでいいんだよ」
何一つとして通じ合えない。
晃成は諦めたようにため息をつくと、背中を向けて駆け出した。これ以上かかわっている気にはなれなかった。ずっとカメラが向けられている事には気がついていた。撮影されたものは面白おかしく編集され間もなく世界中を駆け巡るのだろう。勝手にすればいい。
こんな奴らから雪華を守らなければ。今すぐ城へ戻れと言わなきゃいけない。一生の別れになったとしてもこんなくだらない奴らに雪華を穢されたくなかった。
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