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第20話
かじかみ、力のない手からポロリと落ちたカメラを拾うと、雪華は男たちにレンズを向けた。無表情に撮影し続けた彼にも初めて恐怖という感情が浮かんだ。
「助けてください」
震える声で懇願され、雪華は鼻で笑った。
「何を? なぜわたしが?」
気温は急降下し続ける。晃成だけは温かな毛布に包まれたようなぬくもりの中にいた。見ると細が守っていてくれている。嫌いな晃成を守ってくれているのが雪華の言いつけだとわかっていても嬉しかった。
「ありがとう。細さん……」
消え入る声でお礼を言うとギョっとしたように晃成を見、静かに首を振った。
「あなたは王の大切な人ですから。必ず守ります」
雪華の大切な人。そう言ってくれたのか。命の最後に優しい言葉を聞けて良かった。
「雪華……さ、」
もう声も出ない。遠くなっていく意識の中で、雪華の美しい銀髪が雪に舞っているのが見えた。コタツの中でだらける彼が大好きだ。だけど王として君臨している雪華も愛している。
一緒に生きていくことが出来て、本当に良かった。
嵐は吹き荒れる。すべてを消し去るように荒々しく、誰かを守るための優しさは時に恐ろしい。
「殺しちゃ、ダメ、だ……」
祈るように背中に向けて囁いた。
どうかその手を穢さないで。くだらないもののために罪を犯さないで。命あるものに生きる権利があるのなら、どうか、最後に庇護を見せて。
その願いが通じたのか、晃成にはわからない。
真っ暗な底に沈んでいく手前で、雪華の強い腕に掴まれた気がした。
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