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第21話
目を覚ました。
重たい瞼を上げると懐かしい部屋の中にいるのが分かった。ぼんやりと天井を見上げていると何かが違う。なんだろう、と考え込んでいるとヒョッコリと雪華の顔がのぞき込んできた。
「おっ。目が覚めた?」
嬉しそうな笑顔に微笑み返そうとして痛みで歪む。
「痛い……」
「だろうね。ズップリ刺されていたし」
隣に細の無表情も現れて「気分はどうですか?」と質問される。
「なんとか……俺、死ななかったんですね」
プツリと途切れた意識の先にこんな天国が待っているとは思わなかった。また帰ってくることができた。
ベッドに横になったまま辺りを見渡すと、前とは少し違うような気がする。そう口にすると雪華は悲しそうな顔を向けた。
「よくわかったな。ここは俺の城。連れ戻されちゃったんだよ」
晃成が意識を失う寸前「殺すな」と言った言葉を雪華は守ってくれたらしい。代わりに彼らの記憶を全部奪い、なにもわからない状態であの場所に捨ててきたという。それは死刑宣告と同じようなものだけど、もし神のご加護があれば生きて戻れただろう。
「あの部屋じゃなきゃ嫌だってさんざん駄々をこねてみたら、なんと、細が再現してくれましたー」
ぱちぱちぱちーと乾いた音を立てて拍手をする雪華に冷たい視線を向けて細は晃成をゆっくりと抱き起した。ヘッドボードにたくさんのクッションを置いて辛くないように支えてくれる。
「細さん優しいんですね」とお礼を述べると心底嫌そうな顔をされた。やっぱり嫌われていますか。
「細は照れ屋さんだから褒めるのも手加減してやって。でも惚れるなよ」
ベッドにドスンと腰かけて雪華は晃成の顔を覗き込んだ。安心したようなさみし気な色に晃成はかなり心労をかけてしまったことを知る。普段飄々とした雪華にこんな顔をさせてしまったことを激しく悔やんだ。雪華にはいつだって笑っていてほしい。
「勝手なことをして、大変な目に合わせてしまってごめんなさい」
素直に謝ると雪華は「ほんとだよー」と唇を尖らせた。
「もう勝手なことはすんな」
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