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ようちゃん

 「傷治してくれるって言うから預けたのに……ごめんな、ゆーたん」  真綿で僕を包み込むような柔らかな声。  離すもんかと強く優しく抱いてくれる胸。  天使のように口角を大きく上げる厚い下唇。 二重のくりくりした瞳の左側に大きいほくろ、高い鼻が細長い輪郭に収まっている彼が僕を助けてくれた人……ようちゃんで間違いない。 「ありがとう、ようちゃん」 だから僕も彼を真似て口角を上げたんだ。 すると、今度は顔を赤らめて目を見開くようちゃん。 「フォーリンラブ♪」 近づいてきた唇にびっくりして、僕は目を閉じた。  つつくようなキスを2回した後、僕の唇を挟む。   はむはむと右左と顔を傾けながら食むから、変な気持ちになる。 だんだん上がっていく身体の熱を出すために軽く口を開けると、ようちゃんの舌が滑らかに入ってきた。 「ふっ、ふああっ……」 声にならない声がようちゃんの口に吸い込まれてる。    「やららわやや」 意味のわからない言葉をようちゃんが唱えた途端、僕の口の中がほんのり温かくなった。 玉のようなもので甘くふわふわしたものだったけど、苦しくなってきたから飲み込んでしまった。 でも、そうしたら力がみなぎってきて、血の巡りが一気に良くなる。 口の中を舌で蹂躙してからチュパッと離れたら、銀色の糸でまだ繋がっていた。 それを細い目で見つめながら長い舌で絡めとり、ニッと笑った顔がとてもカッコ良かった。 「治療系は苦手だからイヤなのに……はやく着替えてご飯食べよ?」 コテンと首を傾げたようちゃんが今度は可愛くて、彼も僕のお兄ちゃんだってことを忘れそうになった。    「着替える前にちゃんと身体見た方がええんちゃう?」 「わたくしもひるも言われたことはちゃんといたしましたよ」 2人の言葉を聞いて、僕は恐る恐る自分の身体をチェックしてみる。 さっきまで吸われていたはずのお腹に傷がないのはおろか、今までの痣も切り傷も見当たらない。

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