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悪魔の目

 "いつまでもそばにいたい" "運命をかんじてるよ" 恥ずかしいくらい真っ直ぐな恋のセリフを甘くて低い声で歌うようちゃん。 真顔で左側を向いているから、クールな印象を受けるのに、僕の手を握る手は強くて柔らかいんだ。    人生で一番美味しいご飯を食べた後、ようちゃんと外に出た僕。 淡い青色の空で太陽が見えなかったから、まだ朝早いんだと思ったんだ。 だから、朝早く出掛けたらようちゃんも大変だし、髪を切るお店の人にも迷惑だって思っているんだけど。 でも、ようちゃんは上機嫌で恋の歌を歌っているから、言えないし。  「そんなに見つめられたら、穴開いちゃうよ」 ふふっと笑う声が聞こえて、ハッとした僕。 口角を上げたようちゃんが目を細めていたから、カッコよさがより増して胸の高鳴りが止まらなくなった。 「なんでそんな蕩けた顔をしているの? 普通に見てるだけだよ?」 甘く低い声で言いながら手を滑るように撫でるから、変な気持ちも湧き上がってくる。 「感度良すぎ……アレしなくてもいいね」 「アレって……?」 僕はわからなくて、熱い息を吐くように言うと、ようちゃんは左手を左目の前で翳した。 すると、茶色だった瞳は赤々としたものに変わる。 それは僕が意識を失う前に見たものと同じだったんだ。 「悪魔の目……人間なら3秒見つめるだけで心臓発作で死に至らせるほどの最強最悪の代物さ」 そう言って茶色い左目と一緒に細めるようちゃん。 でももし、両目が赤くて3秒見つめられたら、もう死んでるんだなぁって呑気に考える僕。 「全然怖くないよ、僕は」 僕はむしろ赤い瞳が好きで手を伸ばすと、ようちゃんはその手の甲にキスしてくれた。 「俺の方が殺されそう……ゆーたんのかわいさ、殺人級だから」 ヤバいよ、ゆーたん……なんていつの間にか茶色に戻った右目をウインクして呟くから、僕はくすぐったくなる。 誰もいない時間帯で良かったって、やっと思ったんだ。

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