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瞳耳
「あそこに行ったのはたまたま……御前家って名乗ったら誰でも良かったんだ」
「だから君に手を掛けたのに、君は抵抗しないし……挙げ句の果てに悪魔の目に触ろうとするし」
顔を上げたようちゃんの目は潤んでいたし、頬が濡れていた。
「約束して! もう自分を犠牲にしないって」
こんなに僕を想ってくれるなんて、僕は心臓が破裂しそうだ。
「約束する、ようちゃんのために」
「アホ……自分のためにしてよ」
口角を上げたようちゃんは僕の額にデコピンをしてまた強く抱きしめてくれたんだ。
落ち着いた僕らはまた歩き始めた。
「そうだ。この服って大丈夫?」
真昼から借りた服だから、変とは一概に言えないんだけど。
いちご柄の黒いパーカーに黄緑のパンツってなんか目立つなと思うんだ。
「大丈夫だよ、よく似合ってる」
手を恋人つなぎしながら横を歩いてくれているようちゃんの服装は紺色のワイシャツにワイン色のパンツ……ちょっとカッコいい。
「デートみたいだね」
冗談で言ったのに、目を輝かせてほんと!?と言うようちゃん。
上機嫌になったようちゃんは手を大きく振り、スキップをして進んでいく。
「左はカラフルな家が多いけど、右は素朴な感じがするね」
左は虹みたいな色使いの家とか四角形が3個積んだような家だったりする。
でも、右は上が黒で下が茶色、それに木で出来た家ばかりだから、左右で世界が違う気がする。
「この街ってイメージは日本みたいで、左は近代的、右は古風なんだって」
今日は近代的な方のお店♪と付け加えると、左を向いて止まるようちゃん。
三角形で上は紫、下は赤の建物で、看板には『瞳耳』と書かれている。
「ひとみみ……?」
「ひとみ! まぁ、入ればわかるさ♪」
鼻歌を歌いながら黄色いドアを開けて入ったようちゃんについていった。
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