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似とるわ
「楽しいか? 夕馬」
大人の感じがぷんぷんする低い声に慣れなくて、思わず背筋を伸ばして返事をする。
「ふはっ、ええわ普通で。たぶんそんなに年変わらんし」
黄色いタオルを僕の首に巻きながらフランクに言うトワさん。
「失礼ですが、おいくつですか?」
「こう見えて22、市知は夜彦と同じやから20か」
今度のタオルは僕の肩に掛けるトワさんの鼻髭を棚引かせた顔が鏡越しに見えて、もっと年上かと思っていたから驚く。
それよりもイチさんは若く見えて僕と同い年かと思っていたから、ええ!と声を上げてしまった。
「あめんなほ!!」
ようちゃんと仲良く話していたイチさんは僕を睨み、噛みつくように叫んだ。
「ごめんなさい」
僕は怯えながら謝る。
「でもな、市知……夕馬のこと、好きやろ?」
僕の腕に赤いマントを通して着せつつ、トワさんは半笑いして言う。
「あい! あいしゅき!!」
白い歯を見せて笑ってくれたから僕はありがとうと言ったんだ。
「今は聞こえへんけどな、雰囲気でわかるんやて」
トワさんは僕の髪を探るように触れて言う。
「まぁ、真昼みたいに手話してくれたらもっと会話出来るけど……なぜか、夜彦にはさっきみたいに噛みつくから誰でもええねん」
みてみ? と言われて隣を見ると、楽しそうに話しているようちゃんとイチさんがいた。
「何回でも来て話してやってや? もちろん、わしもよろしゅうな」
シッシッと笑うトワさんに普通に返事をすると、ええ子やと髪を雑に撫でてくれたんだ。
「夕馬……もしかして人間か?」
僕の顔に触れながら深みのある低い声で言われて、ドキッとした僕。
「人間臭いからもしやと思ったんや。大丈夫、わしも市知も同じやから」
ポンポンと頭を叩いて優しく微笑むトワさんにうんと素直に言うと、ほんまにお前は……とまたさらりと撫でられた。
「それにしても自分ら、よう似とるわ」
「「ほくろ?」」
トワさんの言葉への反応が同じで、僕は恥ずかしくなって顔が熱い。
いや、と言ったトワさんは僕の顔を両手で上から下になぞり、また上に持ってきた。
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