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金髪
「二重でくりくりした瞳」
押さえられる僕の目。
「尖ったような高い鼻」
ふにふにされる僕の鼻。
「下が厚い唇」
摘まれて伸ばされ、離したらぷるんと震える僕の唇。
鏡でまじまじと見てみると、悪い顔はしてないなと僕は初めて思った。
言われて気づいたのは、トトとカカの特徴も僕は持っているんだということ。
それが本当なら、僕は2人の子どもだと見られるんだとわかって嬉しくなった。
「拾ってきたと聞いたけど、あの肝っ玉母ちゃんが無意識に産んだんちゃうか?」
トワくんがお世辞かもしれないけど、嬉しいことを言ってくれて心が温かくなる。
「カカならありえるかも」
ようちゃんも嬉しそうに笑っている。
「それならあとは髪型と髪色やな……心配すんな、ちゃんと変えてやるわ」
トワくんはまた目尻に皺を寄せて笑い、髪をスパスパと切っていく。
パサパサと軽くなっていくたびに、本当に変わっていっている感じがした。
さよなら、淋しい1人の僕。
「朝日家の髪色は惑星をモチーフにしてるんやっけか」
「別にいいよ、制限しなくても」
「ピカピカがひひとおもふよ!」
本当にここの人たちは僕のことをよく考えてくれる。
だから、僕もその中に加わりたいんだ。
自分のことを自分でも考える人になるために。
「ピカピカだから、金色とか?」
そう言っただけなのに、3人の視線が僕に集まる。
「なんか僕……変なことを言った?」
ビクビクしながら言うと、3人とも穏やかに微笑んだ。
「ええわ……ゴールドに決まりな。ということは、短髪にするわ」
おおきにと優しく言ったトワさんは僕の顔を鏡に向け、さっきより大胆に髪を切っていく。
「この街の奴らはちゃんとわかってんねん……目に見えないものの方が大事なんやって」
トワさんは僕に教えるように丁寧に語った。
「俺らが生きてきた世界とは全く違う楽園みたいな場所や……たくさん学んで、自由に生きろ」
ふっと笑うトワさんの顔は達観していて、とてもカッコ良かったんだ。
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