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独占欲

 「トト、カカ……おはよう」 僕は両親にきちんと挨拶をした。 「おはようさん」 トトは広げた新聞から目を離して口角を上げてくれた。 「おはよう……今日はいい日よ」 ふふっとカカは笑ってくれたんだ。  「今日は肌寒いからコートを羽織りなさいね」 そう言うカカは薔薇色のコート、隣のトトは紫のコートを着ていた。 お互いの色を交換するのって、なんかいいなと思ったんだ。 「それなら僕らも交換しようよ」 ふふっと笑うようちゃんは僕の手を引いて、コート置き場へと駆けていった。  追いついてきた夜彦と真昼も合流したのはいいんだけど。 「ゆーたんは僕の番だから、ピンクを着るに決まってんの!」 「いつでもきれるやんか……きょうはぼくぅにゆずってもええやん!」 「むむっ! わたくしのオレンジは黄色とあまり変わらないのでよく似合うと思うのでございますよ!」 僕に自分たちの色を着せたくて3人とも譲らない。 これが独占欲だと、僕が勉強のために通っているところで最初に教わったなぁとぼんやり思い出す僕。  最終的に僕がみんなが意外と似合いそうな感じに決めたんだ。 漢字がびっしり書かれたパーカーの夜彦には深緑 色とりどりのパッチワークのパーカーの真昼にはピンク 宇宙の写真がプリントされたパーカーのようちゃんには黄色 そして無地の灰色パーカーの僕にはオレンジにした。 「やはり、お似合いでございます」 「ゆーたんの匂い嗅ぎ放題♪」 僕に自分の色が当たった夜彦と僕の色になったようちゃんは上機嫌だけど 「なんやねんボケ……」 真昼はいつもより不機嫌になった。 でも、真昼の不機嫌は表情豊かな証拠だと思ったら愛おしくなるんだ。 「真昼、似合ってるよ」 僕がお世辞ではなく、本気で誉めると、すぐに真昼の眉間の皺がなくなる。 「まぁにぃやからな、なにきてもにあうにきまってんねん! ほれてもしらんからな」 ふふんと自慢気に鼻を鳴らした真昼は襟を左肩から外して妖艶な笑みを浮かべるというカッコいいポーズを取った。 ほら、表情豊かでしょ? でも、やっぱりただのβではないかな。

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