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七夢
3人で似合うやつ探してくるから、と言われた僕は畳に座って待っていた。
「ヘイ、新入りくん! この街には慣れたかい?」
振り向くと、白髪の彼……七夢さんがニヤニヤしながら僕に話しかけてくる。
「ななちゃん、その呼び方やめなよ」
灰色の彼が優しく宥める。
「慣れましたよ、いい街ですね」
僕は七夢さんにきちんと身体を向けて、そう返した。
「そうだろう、この街はパラダイスだからねぇ〜ん!」
ラウンドサイドショートの七夢さんはふふんと鼻を鳴らして、口角を上げた。
「六実 、アレ持ってきて」
指図するように言う七夢さんに、はいはいと不満そうに返事をして奥へと消えていくショートボブな六実さん。
僕は見つめたまま微笑んでいる七夢さんをボーッと見る。
ピコピコと動いている白くて三角の耳、大きい瞳、黄色の甚兵衛、そして長くてくねくねしている尻尾。
触ったらどうなるのかなという好奇心に勝てず、握ってみた。
「ふにゃん!」
甲高い叫び声と同時に右手のブローを食らう僕。
「ごめんなさい、つい触りたくなったんです」
荒い呼吸をしている七夢に素直に謝ると、目を見開いた七夢はすぐにまた微笑んだ。
「人生ってサイコーだろ?」
いきなりの言葉に今度は僕が目を見開く。
「今までどう生きてきたか知らねぇけど、これから楽しいぜ……」
好奇心が湧くのはその証拠さ、と隣に座り、僕の胸を人差し指でトンと突いた七夢さん。
「そのうち、死ぬのが怖くなるぞ……ヒャッハー!」
いきなり叫ぶすごいテンションの高さに驚いたけど、はいって明るく言ったんだ。
「はい、これだから着て」
六実さんはしゃがんでぶっきらぼうに言い、長袖で白のTシャツを渡してきた。
七夢さんは六実さんの肩を2回叩いた後、ひょいと小上がりを降りて、3人のもとへ消えていった。
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