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六実
僕は早速パーカーと灰色の半袖シャツを脱いでそれを着てみると、厚手の毛でモコモコしていて気持ち良かった。
「温かいでしょ……それ、おれとななちゃんの毛だから」
茶色の着物を着た六実さんは静かに口角を上げていた。
「これ、手作り。前の薔薇はぼくがキルトでやってみたんだ」
落ち着いているけど響く声で言う六実さんの言葉を聞いて前を見てみる。
右回りでピンク、緑、茶色、黒、オレンジ、その真ん中は金色で輝いていたんだ。
「ひるちゃんがここによく来て、コーディネートのこととかアレンジの話をするようになったのが1ヶ月前……ちょうど君が来てからだね」
真昼の姿が見えて、七夢さんとアクセサリーを持ちながら楽しそうに笑っていた。
「ひるちゃんはΩになりたかったって。βだとやりたいことよりやらなきゃいけないことが多すぎて悩むから」
あの子は人一倍優しいしねと言うから僕は驚く。
「Ωの夜彦は馬鹿にされるから守らなきゃいけないし、αの陽太は何でもするから止めなきゃならないって苦しかったんだって」
三角の耳をピコピコさせながら小さい瞳でじっと見つめてくる六実さん。
「ぼくとななちゃんはどっちもβだから大丈夫だけどね。日本ほど弊害はないけど、悩みは尽きないみたいだよ」
僕は真昼のことをわかっていなかったんだと思い知らされた。
真昼は意地悪で一番自由だと思っていたんだ。
「でも君が来てから、わがままな自分が出せるようになったって。肩の荷が下りたようになったよ」
六実さんはぷにぷにの肉球の手を僕の手に重ねる。
「だから、薔薇のイメージは朝日家。君はあの家の真ん中で朝日のように輝いているんだよ」
これからもよろしくねと静かに微笑まれたから、僕は大きく首を縦に振ったんだ。
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