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神さまのマント
「むっちゃん、ナイスセンスでございますね」
んふふっとちょっと気持ち悪い声を上げる夜彦。
ようちゃんが選んだ星型のイヤリング。
真昼が選んだ深緑のメガネとブレスレット。
夜彦が選んだ黒とオレンジのストライプのパンツ。
そして、六実さん手作りのキルトで出来た薔薇がメインの長袖のTシャツが合う素敵なコーディネートなんだ。
「これならぼくらが家族やってすぐわかっちゃうねぇ」
とても嬉しそうに笑う真昼。
「なんなら、身体にも刻んじゃおうか?」
妖しい笑みを浮かべるようちゃん。
似たような顔をしていても、やっぱり反応が違う。
でも、それが兄弟なんだ。
小高い丘を登っていくと満天の星空が近づいてきた。
「おーい、こっちこっち!」
叫び声の先を見れば、薔薇色と紫色が映えていた。
「飛び込んでおいで、ゆーたん♪」
びっくりしているうちに3人に背中を押され、先へと走っていく。
「おお、決まってるわ……かっこええで」
下唇を噛みながら頭を撫でる薔薇色のワイシャツの人はトトだった。
「当たり前でしょ、私の自慢の息子だもの」
後ろからギュッと抱きしめて左右に揺れる紫色のトレーナーの人はカカ。
「そんなもん、おれやってわかってるし!」
拗ねたように言うトトを見て、楽しそうに笑うカカ。
これが僕の両親なんだ。
「あれがオーロラよ」
カカが僕を抱きしめたまま座って、空を指差す。
カーテンの形をしたものが青と緑に煌めいていた。
まるで、神さまのマントだ。
「綺麗だね……初めて観た」
「これからたくさん観れるわよ」
おほほと笑って僕の後頭部にキスを落とすカカ。
「私ね……見た目は男だけど、心が女なの」
性同一性障害って教えてもらった? と聞くカカに
うんと答える。
「それに、血縁上はあなたの兄なのよ」
カカさ苦しそうに言って僕のお腹に回っている手を強く握った。
「でも、カカはカカだから」
僕は本当に思ったから口角を上げて言い、カカの手に優しく重ねた。
「僕の母は朝日千佳……カカなんだよ」
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