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「…昔の腹いせにしたって……コレは質が悪すぎやしないか?」
そう言うと、汰紀の細い眉が上がった。
「そう言うって事は、悪気はあったんだ?」
「っ………」
聞き返されて言葉に詰まり、バツが悪くなって下を向く。
「あ、謝れば…いいのか?」
「素直だね?」
「こんなへんちくりんな所からさっさと出たいんでな………って、お前!レナはどうしたっ!?」
もつれる足で格子に駆け寄ると、汰紀は手の届かない位置まで身を引いた。
「レナ?」
「オレの連れだ!!一緒にいただろ!?」
「…あぁ、知りたい?」
何を考えているのか分からない表情で問い掛けられ、侑紀は苛ついて縛られた手で格子を叩く。
「お前!レナになんかしたら承知しないからなっ!!」
侑紀がそう言うと、汰紀はやっと人間らしく顔をしかめて見せた。
「承知しないって…どうするの?」
「ど、どうするって……そりゃ…」
殴るとか…ともごもごと言うが、格子の隔たりがある以上それは不可能だ。
「殴る?殴ってもいいけど…彼女どうなってもいいの?」
「は?っちょ…お前分かってるのか!?言ってる事、犯罪紛いだぞっ!」
「うん?そう?」
薄い唇に笑みを乗せて笑う弟に寒気を感じて、よろりと後ずさる。
「とにかく出せよ!話はそれからだ!」
「話?話なんか無いよ?」
「は?」
「立場分かってる?あの女を守りたいなら、言う事聞くしか無いんだって」
そう汰紀は深く微笑んだ。
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