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「は?」 「じゃあ昨日もヤってたんだ?」 「ちょ、待て、なんで…」  手は止まり、呆気に取られて汰紀を見る。 「高木レナ、だっけ?」 「なんで知ってんだ!?」 「え?調べたから」  しれっと言い、汰紀は二重の扉の内、最初の格子の扉に手を翳した。  ぴっ  小さな電子音と共に鍵の外れる音がし、ゆっくりとした動作で侑紀の居る座敷牢へと続く扉を、今度は鍵を使って開ける。 「なかなかハイテクだろ?」  からかう声を聞かないまま侑紀は一気に駆け寄り、弟の襟首を掴み上げる。 「っ…」 「調べたって…な、なんだ!?」 「何でも屋って言うの?凄いよね、誘拐までしてくれるんだから」  締め上げられ、苦しい息の下から可笑しそうな声がする。 「誘拐より、強姦とかの方が喜んでやってくれそうだよね?」 「何考えてんだっ!!」  更に襟を掴んだ手に力を込める。  汰紀は苦しそうに喘いだが、振り払おうとはしなかった。 「あれ?兄貴より俺の方が身長高いんだ?」  飄々と、まったく関係の無いことを言う汰紀を突き飛ばす。 「茶番は終いだ!!帰るっ」  座敷に転がる弟に一瞥をくれて扉を潜るも、外側の扉は押しても開かない。 「っ!?くそっ」 「…俺の静脈じゃないと開かないよ」  その言葉に、悠然と座り込む汰紀を振り返った。 「じゃあ開けろ!」 「やだね」 「汰紀っ!!」  怒鳴り付けるが、汰紀の涼しげな表情は変わらない。 「兄貴は俺の言う事を聞くしかないんだって」 「嫌だって言ったら?」 「あの女が肉便器になるだけだよ」  さらりと返され、言葉もなく立ち尽くす。 「さ、続けてよ」  そう汰紀は促した。

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