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 畳の上に転がされているせいか、あちこちの痛む体で目が覚めた。 「…………なん、だ?」  胸の前で括られていた筈の腕は後ろで手錠を掛けられている。  感覚から、包帯を巻かれているのを感じ取った侑紀は、手当てに気付かない程深く眠っていたのかと視線を落とす。 「汰紀…」  もしかしたら汰紀もこんな事をして後悔しているのかもしれないと、体を起こしながらぼんやりと考えた。  何をする事も、出来る事も無く、ただぼんやりと壁の鳳凰を眺める。  金で縁取りされた赤や緑、 青の羽をただ見やる事しか出来ない。  後ろ手にされている為に痛む肩を休めるようと寝返りを打った時、ぎし…と階段が鳴った。 「あぁ、起きてたの?」  一歩一歩、ゆっくりと降りてくる汰紀の服装に、侑紀は反応した。 「…誰か……亡くなったのか?」  その問い掛けには答えないまま、うっすらと笑いながら格子の中へと入ってくる。 「亡くなったのは、兄貴だよ」  は ?と、侑紀の口から息が漏れる。 「アパートも引き払ったし、会社にも挨拶してきた。不慮の事故で…って涙ぐめば信じてくれたよ?」 「はぁ!?なんだよそれっ!」 「兄貴は死んだって事になってるから」  真っ白になった頭で、衝動に促されるままに汰紀に駆け寄った。  手が自由なら掴みも出来る襟元を、ぎりぎりと歯を噛み締めながら睨み付ける。 「な、何やってんだ!」 「兄貴を探されちゃ、堪んないからね。先に手を打っただけだよ」 「っ!!」  弟のその行動に、侑紀は言葉を失って座り込んだ。  ついこの間、チーフに抜擢されたばかりだった。  小さな会社とは言え、侑紀の年でチーフを任されると言う事に遣り甲斐と喜びを感じていた。

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