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「腹いてぇ…」  弱々しく呻きながら、手探りで格子の端にあるトイレに這い寄る。  格子の端に辿り着き、手は拘束されたままだったので足でトイレを確認した。  爪先に触れた、畳と格子以外の感触にほっとする。 『この壁の使い方、教えて上げるよ』  そう言って汰紀は部屋の明かりを消した… 「っ…く、そぉっ」  腹痛に、ぎりぎりと奥歯が音を立てる。  自分以外、音を立てる物のないそこではそれすらも大きく響き、侑紀ははっと口を閉じた。 「……」  場所は何も変わらない。  変わらないはずなのに、暗転したその場の雰囲気はどろりと濁った物に傾きつつあった。  耳が痛くなるような沈黙に、限界を感じて息を漏らす。 「はっ、何が壁の使い方だ。こう暗くちゃ絵なんか見える訳ねぇし」  そう吐き出すも、その声は響く事もせず、応えもないままに霧散した。  沈黙と暗闇に、居心地の悪さを感じ、 「汰紀っ!!ちっせぇ子供じゃねぇんだから、暗いのなんか怖くねぇぞ!」  返る静寂に、息を飲む。 「んな事より飯食わせろ!!飢え死にさせる気か!?」  けれどもやはり音は返らず…  真っ暗な中、格子に身を寄せた。 「おい!風呂は!?お前の汚ぇもん付けたままでいたくないだけど!! 返事しろよ!聞こえてるの知ってんだぞ!?どっかから悪趣味にオレがこうやって言ってるの見て笑ってんだろ!? 汰紀っ!!」  ひとしきり叫んだ後に訪れた静けさが、背筋を撫でたかのように悪寒が起こる。

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