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 普段、一切の音が聞こえない格子は、余程大きな台風なのか、今日に限って外の音らしい風の唸り声を微かに届けていた。 「………」  風の音を裂くように轟く雷鳴が聞こえて侑紀は思わず傍らで横になる汰紀にしがみついた。 「いつもそんなふうに可愛いげがあるといいね」 「………」  きゅっと侑紀の眉間に皺が寄る。 「…オレに……可愛いげがあったって…キモいだけだろ」 「そんな事ない、無くたっていいけどさ」  汰紀は誰が見ても大仰と思える表情で起き上がり、時折響く雷鳴にびくつく兄を抱き締めた。  自身がつけたキスマークが点々と残る背中を宥めるように撫で、何かから守るように腕の中に包み込んだ。  どぉん…と、地に響く音に侑紀が跳ねた。 「兄貴、可愛い」 「ちが…っいきなりでびっくりしただけだっ」 「うん?そうしておこうか」 「汰紀!」  胡座の上に侑紀を抱え込み、俯くその顔を覗く。 「可愛い」 「…脅しからおだてに趣旨替えか?」  苦々しげに言うと、汰紀がぱっと破顔する。  侑紀の伸びた髪を掻き上げてやってから頬を擦り寄せた。 「なんだって良いんだよ。兄貴が手に入れば」 「……」 「ずっと触りたかった」 「……ずっとって………いつからだ?」  侑紀の向けた言葉に、汰紀は興味を持ってもらえて嬉しいと言うように笑み崩れた。 「兄貴に寝取られた時から」  そう言われ、侑紀は気まずげに視線を落として指を握り締める。 「お前の…初カノ、……悪い事したよ」 「うん?気にしてないよ?」 「恨みじゃ…ないのか?」  汰紀は無表情のままに首を捻った。

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