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自分の下にある腕からそっと頭をずらす。
「………」
その顔を覗き込み、深く寝入っているのを確認してから体を起こした。
絡まるように伸ばされていた手足をそっと避けて這い出る。
どぉ…ん…
微かだが雷鳴が鳴り響く音がまだ聞こえていた。
耳を済ませてそれを確認した後、ぎゅっと唇を噛み締め、開いたままの内側の扉とその向こうにある閉ざされた扉に目をやった。
そして、ひっそりとその口許を綻ばせる。
「後はただ…運を天に任せるのみだ」
そう呟き、扉の傍に座った。
きつく指を組み、何ともしれない物に祈りを捧げる。
消えろ…
消えろ…
そう声を漏らさないままに唇が形を取った。
どぉ…ん
ごろ…
巨人の腹の音に聞こえる雷の音が一際大きく聞こえた瞬間、
「っ!!」
世界が暗転した……
ぶるりと駆け上がる悪寒に震える侑紀の耳に、カチン…と小さな機械音が届く。
「…や……た…」
足が震えて立ち上がる事は叶わないが、這うようにして扉にたどり着く。
こちらの扉は、汰紀が格子内にいる間は鍵が掛けられる事はなかった。
そこを潜り、静脈の認証によって開く扉を押す。
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