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 一か八か。  家庭用に於いて、停電時に開錠される事があると朧気に聞いた記憶があった侑紀は、それをどこで聞いたか思い出そうとしながら手に力を込めた。  ここに使われている物がそうだとは限らない。  けれど…  キィ…  扉はあっさりと侑紀の力に負けて開いた。  微かな音にびくつき、暗くて見えないが、汰紀の寝ている辺りを振り返る。 「………」  音は、しない…  ひたりと、畳以外の部分に掌が触れた時、侑紀はぶるりと震えて身を縮めた。  汰紀を出し抜いたと言う思いと、外に出られる喜び、そしてここから出ると言う行為にのし掛かる罪悪感がない交ぜになる。  けれど…  這いずるように脱け出し、今まで見ることしか出来なかった階段を手探りで探す。  キシリ…  体重を預けると鳴る階段に顔をしかめながら腕を伸ばした。  見上げた先にある闇の先に、外に出る扉があるのだと侑紀は薄く笑った。  格子を振り返り、小さく吐き捨てる。 「オレが逃げるまで、寝こけてろ」 「ふぅん」  間近で返された言葉に、侑紀の全身の毛が総毛立つ。  反射のように体がすくみ、右足が板から滑り落ちる。 「ぁっ……っ」 「何してるの?」  直ぐ傍にいる気配に体が震え始めた。 「見えないでしょ?暗くなる前には、目を閉じて慣らしておかないとダメだよ?」 「おまっ…じゃ、寝てたんじゃなくて……ぅっ!!」  右足首が掴まれ、ゆっくりと力が籠る。  じわじわと締め付けられて行く足首を振り払おうとするも、監禁生活ですっかり衰えた筋力ではそれも叶わず、抗う事も出来ないままに階下へと引きずり下ろされてしまう。

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