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「お袋 の?………っ」  頭からそれを剥ぎ取り、畳に叩きつける。  しゃくりが治まらずに震えたままの唇で要らないと呟く。 「……大事にしてよ?大切な形見なんだから」  汰紀はそう言うと無情に投げ出された振り袖を拾い、埃を払う振りをした。 「形見…」 「あれ?言ってなかったっけ?」  再び侑紀の体に振り袖をかけながら、母親に良く似た顔で微笑まれて後ずさるが、汰紀の腕が侑紀を捕まえる。 「母さんも亡くなったよ」  耳元で囁かれた言葉に、しかし侑紀はなんの反応もせず、逆に体の震えを抑え込むように汰紀を睨み付けた。 「…子供を置いて出ていくような女、どうなろうと知ったこっちゃないっ」 「うん…あの時は大変だったよね」  汰紀の遠くを見やる目は、母親が突然いなくなった為に起こった騒動を思い出しているようだった。 「でも──────」  侑紀は、汰紀の微笑み中にある、黒く澱んだ物に気付いて顔をしかめた。 「母さんが亡くなったのがここだって言ったら?」  つぃ…と指先が、格子内の一角を指す。

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