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「同じ事が言える?」
「は…何言ってんだ……あいつは男と……………」
変わらない笑みに、言葉が途切れた。
「死因はね、多分餓死だと思う」
「が…?」
「見付けたのが、父さんの四十九日の少し前だから。一ヶ月以上、食事もせずにいたんだから当然だろうけど…狂死かも知れないね?」
「 こ、 こで?」
掠れた声が確認する。
「うん」
あっさりと返して、侑紀の足を掴み上げる。
歩かないせいか柔らかな足裏に口づけた。そのまま舌を這わし、擽るように足裏を舐めて行く。
「…死んだ?」
「うん。両足首がなかったよ。理由は推して知るべしだ」
「あ…し……」
舐められている足から駆け上がる悪寒に、侑紀は逃げようとするが許されず、縫い付けられるように畳へと倒された。
龍を背にした汰紀の目の中に欲情を見付けると、自然と受け入れるように足を倒す。
「ふふ 分かってるね」
満足そうに微笑む汰紀から逃げるように顔を背ける。
「今はそれでいいよ」
ポツリと呟かれた言葉と、柔らかに頬に添えられる手。
切なさの中に愛しさを混ぜて侑紀を見詰めた。
「焦らない。兄貴の世界が俺だけになるまで…ずっと待つよ」
指の甲が瞼を撫で、鼻筋を通り、唇の上で止まる。
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