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「自分の本心で、兄貴から来てくれるのを」
ふわりと笑うと、内にある狂気が影を潜めて子供のような笑みになる。
「………くそっくらえ」
言葉は強気だったが、声は上擦り覇気がなかった。
「キスしていい?」
子供のねだりのような声に怯えながらも、侑紀は首を振って拒否を示し、細やかな抵抗とばかりに唇を強く噛み締める。
「ふふ…お仕置きは亀頭攻めにして上げる。玉を括った状態で、延々と…」
朱の着物を割り開き、現れる胸に軽いリップ音をさせて口づけた。
「潮吹く位、気持ちいいらしいよ?楽しみにしてて」
するりと腹を撫でると、汰紀はおやすみと呟いて立ち上がる。
それを見上げて、侑紀は慌てて着物の前を掻き合わせた。
笑みを残し、汰紀は階段を軋ませながら階上へと行ってしまった。
「お…ふく、ろ…?」
そこで亡くなっていたと、指し示された辺りに目をやると、着物を鷲掴んだ侑紀の手が震え始める。
白くなるほど手を握り締めた手の震えがピークに達した瞬間、
「───────っ」
侑紀は堪えきれなくなったように着物を被って突っ伏した。
ふんだんに花を散らした着物が、侑紀の震えに添って小刻みに揺れる。
─────ク…
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