59 / 62

58

「自分の本心で、兄貴から来てくれるのを」  ふわりと笑うと、内にある狂気が影を潜めて子供のような笑みになる。 「………くそっくらえ」  言葉は強気だったが、声は上擦り覇気がなかった。 「キスしていい?」  子供のねだりのような声に怯えながらも、侑紀は首を振って拒否を示し、細やかな抵抗とばかりに唇を強く噛み締める。 「ふふ…お仕置きは亀頭攻めにして上げる。玉を括った状態で、延々と…」  朱の着物を割り開き、現れる胸に軽いリップ音をさせて口づけた。 「潮吹く位、気持ちいいらしいよ?楽しみにしてて」  するりと腹を撫でると、汰紀はおやすみと呟いて立ち上がる。  それを見上げて、侑紀は慌てて着物の前を掻き合わせた。  笑みを残し、汰紀は階段を軋ませながら階上へと行ってしまった。 「お…ふく、ろ…?」  そこで亡くなっていたと、指し示された辺りに目をやると、着物を鷲掴んだ侑紀の手が震え始める。  白くなるほど手を握り締めた手の震えがピークに達した瞬間、 「───────っ」  侑紀は堪えきれなくなったように着物を被って突っ伏した。  ふんだんに花を散らした着物が、侑紀の震えに添って小刻みに揺れる。  ─────ク…

ともだちにシェアしよう!