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 くつり…と圧し殺しきれなかった笑いが漏れ、侑紀は慌てて着物を被り直す音に誤魔化した。  ───ザマァ…クソオヤジ  噛み締められていた筈の唇がそう形を作る。 『お前は弟に、何をしようとしていたっ!?』  眠る汰紀のへ妖しく伸ばした手を見咎められた時の声が耳内に甦る。  ───聖人君子面シテ、テメェモ同類ジャネェカ  くつ くつ と、喉の奥に張り付いた笑いは絶えない。 『お前から汰紀を守る為だ。卒業したら出ていけ』  母親似の汰紀を溺愛していた父親は、卒業と同時に侑紀を追い出した。  ───マサカ、本当ニ連絡先ヲ知ラナカッタトハナ  道理で蒔いた種が芽を出すのに時間が掛かった筈だった…と、ぼやきながらまたくつくつと笑った。  何年掛かったか…と、着物の下で器用に寝返りを打ちながら思いを馳せる。  まず汰紀に性的事柄に関連を持たせて自分に執着させた。  執着を勘違いするまでにそう時間が掛からないだろうと言うのは、汰紀の性格から容易に想像できた。  後は切っ掛けとなる嫉妬を煽るだけで…  汰紀の気に食わなさそうな女とばかり付き合ったのも、これで報われると言うものだ…と、小さくごちる。  けれど…  ───予想以上ダ  小さく言葉が漏れ、はっと口を押さえた。  監視の為のカメラが有るのは確実だが、盗聴ははっきりとしない。

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