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 どんなに遠くにいても一目で藍沢がどこにいるか分かってしまう。その声や匂いを瞬時に探し出してしまう。自分の中に藍沢にだけ反応するセンサーがあるようだった。そして、それこそが恋の正体なのだと悟った。  自分は藍沢に恋をしている。  冗談ではない強い欲求――藍沢の体が欲しいと思った。その匂いや体温を感じるだけで体が反応した。  藍沢に抱かれている所を想像して自慰を繰り返した。小学生の藍沢が自分の性器を擦っている。それが高校生の藍沢になり、俺の耳元で卑猥な言葉を囁いた。    ――おまえとやりたい。ここに入れてもいい?  想像の中の藍沢は誰よりも優しく、そして淫猥だった。  ――おまえも俺が好きなんだろ? 光太郎。欲しいって言ってみろよ。  体が藍沢を求めて、自分の性器は驚くほど硬くなった。  好きだ。藍沢がどうしようもなく好きだ。  筋肉質の藍沢の肌に触れ、その匂いを嗅ぎ、力いっぱいしがみつきながら、それが自分の中に入ってくる瞬間を想像した。  どれほど苦しいだろう。痛く、甘いだろう。あの日の幼い手を思い出しながら、道を隔ててすぐ傍にいる藍沢を感じながら、数えきれないほど射精した。  欲望を放った後は言いようのない虚しさに襲われた。藍沢の存在を近くに感じれば感じるほど、心の距離は遠くなった。叶わない想いは凝縮し、純度を高め、結晶となって心の内側にびっしりと張りついた。

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