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藍沢が俺の気持ちを読めなかったのは、俺がその部分に細心の注意を払っていたからだ。知られるわけにはいかなかった。俺が藍沢を好きだと――その心を、体を、何もかも欲しいと思っている事を知られるわけにはいかなかった。
浅ましい妄想だけは絶対に知られたくない。知られたら自分がバラバラになってしまいそうだった。
「幼馴染なのに、あれだけたくさんの時間を過ごしてきたのに、おまえ限定で使えないなんて……なんか残酷だよな。今こうやってても、光太郎が俺を避けて消えた明確な理由が分からない。……粘着質だなと思うだろ? でもな、本当にあれはきつかった。何か特別な理由があるなら、それを知りたかった。今でも知りたいと思ってる」
藍沢は引かなかった。俺の中から答えを求めるように、何度も言葉を変えながら追い込んできた。俺は逆に藍沢がどんな答えを求めているのかが全く分からなかった。謝罪だろうか。それなら素直に謝ろうと思った。
「特に意味はなかったんだ。さっきも言ったけど、俺はあの頃、まだ子どもだった。藍沢に彼女ができて、どうすればいいのか分からなくなったんだと思う」
「嫉妬したのか?」
「そうかもしれない」
「深美にか?」
「まぁ、そんな感じかな」
「深美は確かにいい女だった。いい彼女だったよ。おまえが好きだったのも分かる。けどな――」
藍沢は伏せていた瞼をぐっと開けてこちらを見た。
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