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第4話

 第7応接間は玄関を入ってすぐ右手にある小さな応接間で、少し広めのフィッティングルームくらいだった。だが、白と淡いグリーンで統一されたソファや椅子、ドレッサー、絨毯といった調度品も上品なもので、流石、雨宮家の一室とも呼べる応接間だった。 「香井君、お待たせしました」  雨宮と折笠は第7応接間へ行くと、香井は白と淡いグリーンのストライプのソファにどっかりと腰を下ろしていた。梅木原と比べると、髪に色んな色が入っている分、淡い色彩の応接間では浮いていたが、今のところは癇癪も起こさず、じっと雨宮を待っていたらしい。  そして、雨宮の口から今日は雲行きが怪しいので、梅木原と会う予定だったのをキャンセルしたのだということを伝えられた。 「マジで?」 「ええ、梅木原君に連絡し、貴方にも伝えておくって……」 「今日はバイトがあったから、学校、ふけてたし、スマホの電池が切れたから気づかなかった」  すると、香井は「駅5つ分、走って来たのに」と呟く。どうやら、電車も午後からの大雪に備えて、計画的に運休を決定したようで、電車自体も動いていないだろう。 『あいつ、あれでいて走るの、速いんだ』  と、梅木原が香井に対して言っていた評価が雨宮の脳内に響く。だが、この雪と風だ。6月の雨とは違い、冷たさもあるし、積もっているのであれば、足を取られて、香井の強脚を持ってしても、往復はかなり辛い筈だ。 「帰る!」  と香井が大雪や計画運休、雨宮達にもぶつけがたい怒りを3文字に込め、応接間を飛び出すように去ろうとすると、雨宮は折笠に言った。 「折笠君。今日は車を出せそうにないですね?」 「ええ、たとえ出せたとしても、私は雪道は走り慣れていないので、スリップした挙句、香井様や通行している方を死なせて殺人事件を起こすかも知れません」 「そうだ。香井君には雪が止むまで泊まっていってもらいましょう! ということで、香井君。ゆっくりしていってくださいね」

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