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第5話

 ひょんなことから香井は雪が収まるまで雨宮家に泊まることになった。 「てめぇ、どんなことになったら、そうなるんだよ? しかも、なに、勝手に殺してんだよ? 俺は歩いてでも帰るってつってんだよ」  等と、突っ張っていた香井だったが、香井にはこの世で唯一、頭の上がらない人物がいて、雨宮はその人物を知っている。 「と、香井君はおっしゃっているんですけど……」  雨宮はスマートフォン越しに話すと、その向こう側から「香井」と低い声が聞こえる。 「煌……先輩」  スマートフォンから聞こえる声は本人の声そのものではなく、近い音声だというが、声の主を特定するには十分だった。 「香井のヤツが面倒かけて悪いが、世話になる」  という梅木原の声が聞こえ、雨宮は視線で折笠に「頼んだ」と伝えて、梅木原との通話を続けたまま応接間を後にする。 「梅木原様も、我が君も、ああ言われていますし、まずは入浴でもして、寛がれてはいかがでしょう。香井様?」  折笠は雪道を歩き、冷え切ったであろう香井に風呂へ入るのを勧めると、「おう……」と小さく呟き、折笠に言われるままに入浴し、スマートフォンの充電器を借りて、食事の時間になるまで寛いでいた。

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