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第7話

 2人の少年達が空手道着を着て、練習をしている。空手をしている少年達は2人とも同年代の少年と比べると、利発そうなイメージだったが、帯の色が白と緑で、その実力は明らかに違っていた。 「合羽(かっぱ)、一本!」  試合は緑帯の合羽という少年が勝利して、白帯の少年が負けてしまった。 「ありがとうございました!」  と、少年達は声をかけると、合羽は同じく緑の帯や紺の帯の少年達の元へ行く。そして、少年達は、既に試合を終えた折笠のいる更衣室に入ってくる。 「あいつ、超よえぇから楽勝だよなぁ」 「あいつ? ああ、弱宮(よわみや)のこと?」 「そうそう、雨宮グループの坊ちゃんだから怪我なんかさせないで、仲良くしてね、なんて親に言われてるけど、ああ弱くちゃねぇ」  畳を離れ、更衣室に戻ってくると、空手の道で重んじられている少年達の礼儀は鳴りを潜め、思い思いの言葉を口にする。そんな中、折笠は彼らの話には一切、加わらないで、更衣室を出ていった。  すると、白い帯を巻いた雨宮はまだ道場へ残って、師範の先生と稽古を続けていた。 「もう1度、お願いします!」  どこかの皇子様のような、端正な顔を真っ赤にし、髪や道着が乱れるのを気にすることなく、師範の先生に向かっていく雨宮を見て、折笠は思ったものだ。 『確かに、お世辞にも強いとは言えないな……』  片や、折笠の巻く帯は紫ながら、折笠は茶帯や黒帯を巻く年上の少年からも一本勝ちをとるような実力者で、昇段試験を受けると、着実に帯の色を変えていっていた。  だが、それも折笠が10歳を迎えた年の冬までのことだった。

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