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第1話 - 4

先生は静かに口を開いた。 「田中さんは、高木さんと、どうなりたいですか?」 「え?高木と、ですか? ですから今言ったように、…わからないんです…」 「同じ会社で、同じ部署で、同じ寮で、一緒にうまくやっていきたいと思っているんですね」 「あ、それは…はい。 妙なゲーム以外は、そんなに悪い奴じゃないですから…」 「なるほど。 処方薬は、どうされますか?ご希望されますか?」 「希望します。どうにかしたいんです。お願いします」 「承りました」 そう言って、先生はカウンター奥の部屋に薬の調合に立った。 10分ほどして先生が再び田中さんのテーブルに戻って来た。 「使うタイミングは田中さん次第です。 田中さんご自身と高木さん、飲み物に数滴ずつ垂らして飲んでください。 気付かれると変に思われるでしょうから、コーヒーやお酒に、知られないように入れるのが良いと思います」 田中さんは、先生の処方した薬を持って帰っていった。 「先生、田中さん、どうなっちゃうんですかね。今回は、どんな薬なのですか?」 「ふふふ。ルイ君はどう思いますか?」 「ん~、僕の勘では『敵意を忘れる薬』かな。高木さんは田中さんに敵意を持っているように思えます。だから、高木さんにそれを飲ませて、田中さんへの攻撃をなくすことで解決する、的な」 「果たして、そうかな?」 先生が愉しそうに目を細める。 先生のこういう顔は、何かくすぐったいような心持にさせられる。 「違うの?先生、教えてくださいよ~」 「そのうちまた、田中さんが報告してくれるでしょう。それを待ちましょう」

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