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第1話 - 5
2週間ほどして、田中さんが報告したいと言って再び、店にやって来た。
「その後、いかがですか」
報告したいと言ってわざわざ来たのに、言いだしにくそうにしている田中さんに、先生がやわらかな調子で話を振った。
「それがですね、先生。思いもしなかった方向で、解決…というのでしょうか、なんというか、おさまりまして…」
思いもしなかった方向…?
「高木が昨日、僕のことを、好きだ、と…好きだと告白してきたんです…」
「なるほど」
「僕は驚いてしまって…」
「田中さんは、どう答えたんです?」
「僕は…前向きに検討する、と。そう答えました」
耳たぶまで赤くして、田中さんは答えた。
「それはよかったですね」
「は…はい!
…あ、ありがとうございました。それを伝えたくて…」
足取り軽く店を去る田中さんを見送りながら、僕は、なんとなく解せない気持ちだった。
「先生、惚れ薬を渡したんですか?」
「ははは。違いますよ」
「じゃあ、どうして…?」
「考えてみてごらん。
安易に回答を教えられていると、バカになりますよ。
それより、今日は遅くなったから、賄を食べて帰りませんか。オムライス、作りますよ」
「わあ!僕、先生のオムライス大好きです!いただきます!」
夕方、遅くなると、バー開店前に先生が夕飯を作ってくれることがある。
僕はそれも楽しみなんだ。
さてと。田中さんの報告をカルテに追加して…
…って、先生はどんな薬を処方したんだろう?オムライスにつられちゃった。
肝心なところが、僕はわからないままです…。
(第1話 END)
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