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第2話 【大谷さん(ディレクター)】- 1

「セラピーへようこそ。 お待ちしておりました。奥へどうぞ。 ボクはアシスタントのルイです。よろしくお願いします」 今回のクライアントは、40歳前後のポロシャツ姿の男性だ。 「予約しておりました、大谷と申します。テレビ番組のディレクターをしております。 本日はどうぞよろしくお願いします」 感じの良い笑顔で、慣れた調子で挨拶をする大谷さんに、ボクはいつもの説明をした。 「ここでお話になったことが外に漏れることはありません。なんでもお話になりたいことを自由に話してください。 ご予約の際にお伝えした通り、相談時間は60分、無料となります。 ご相談の後、ご希望の場合は、処方薬を有料でご用意します。薬の内容はお伝えできませんが、あなたの人生を後押しする意図で調合するもので、健康に害はありません。 また、薬の見立ては蘆屋先生に完全に任せていただき、クレームなどは一切受け付けておりませんのでご了承ください。 ここまでよろしければ、こちらにサインをお願いいたします コーヒーかお茶をお持ちしますが?」 「ああ、ありがとうございます。それじゃ、薄めのコーヒーに砂糖多めでお願いできますか」 「かしこまりました」 サインが終わるころ、先生が登場する。 「大谷さん、ようこそいらっしゃいました。セラピストの蘆屋です」 先生がにっこり笑って、クライアントの前に座る。先生の顔を見て、大谷さんの小さな細い目が、ひとまわり大きく見開かれた。 「ずいぶん綺麗な先生ですね、緊張しちゃうな…私、大谷と申します、よろしくお願いします」 そう、先生は美人なのだ。 それにしたって、全然緊張している風に見えないけれど「緊張しちゃうな」とか、さすが業界人だ。 薄めのコーヒーと砂糖を出してボクがカウンターに引っ込むと、相談が始まった。

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