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第2話 - 3
それからナオヤは、東京に来るたび連絡をくれるようになりました。
仕事柄 、遅くなることも多いから、会うのは専 らホテルで、夜中の0時まわってからでした。
私は夢中になっていました。
この業界、朝は遅いですから、昼前まで眠るのも忘れて愛し合いました。
ナオヤの体は、白くてなめらかで吸い付くようで、厚い舌はこれまで味わったことがないほど熱っぽく…私は、恋に溺 れて、落ちていく感じを初めて実感しました。
会えば片時も離れたくなかった。ささやくように私を呼ぶ声もたまらなくて…まさに恋です。
ところが。3カ月前だったと思います。
うちの局のスタッフと、例のバーで再び飲んでいたところに、ナオヤが現れたんです。
あれ?ナオヤ、今日東京に来るなんて連絡もらってないぞ、と。
最初の違和感は、それでした。
ウチのスタッフの松本カオルっていうんですが、そいつとコソコソ2人で話してやがるんですよ。
事情を尋 ねると、どうやらナオヤの担当番組は某 アイドルのバラエティらしいんですね。松本はそのアイドルの熱狂的なファンでして、収録現場に潜 り込もうとしていたらしいんです。ヤツは暇 さえあれば地方のコンサートにまで足を運ぶほどのファンなんだとか。
いくら松本がアイドル目的とはいえ、私の知らないところでコソコソ会っていた事が腹立たしくて。そりゃ、私が彼らの交友関係に口をはさむのは筋違 いだって分かってますよ。でも、あんまりじゃないですか。こっちは月に一度会えるか会えないかっていう状況なのに。
東京に来るなら来ると、なぜ私に連絡をくれないのか…
ひょっとしたら、私が知らないだけでナオヤはもっと頻繁 に東京に来ているのかもしれない。ナオヤは私ともっと会いたくはないのか?
嫉妬に狂った女のような自分が我ながらひどく情けないのに、それでも、その渦 から抜け出せないんです。
ナオヤに?
ええ、もちろん問い詰めましたよ。
「オレは大谷さんのこと、大好きだよ」
って言いました。あの声で、うるんだ目で言われると、それ以上聞けなくて……
それでつい松本にツラくあたってしまうんです。松本には責任はない、私の勝手な嫉妬だと、分かってはいるのですがね。でも私の知らないところで会ってると思うと、腹立たしさが止まらないんですよ。
あれからこの2カ月ほどナオヤから連絡が来ていないんです。
こちらからメールすると「次いつ東京に行けるか分からない」と。
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