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第3話 - 2
「成瀬といいます。あの…」
「成瀬さん、ようこそいらっしゃいました。セラピストの蘆屋(あしや)です。こちらはアシスタントのルイ君」
「ルイです、よろしくお願いします。早速ですが、まず…はい、こちら誓約書になります。
ここでお話になったことが、外に漏れることはありません。なんでもお話になりたいことを自由に話してください。
ご予約の際にお伝えした通り、相談時間は60分、無料となります。
ご相談の後、希望される場合は処方薬を、有料でご用意します。処方薬の内容はお伝えできませんが、クライアントの人生を後押しする意図で調合するもので、健康に害はありません。
また、処方薬の見立ては蘆屋先生に完全に任せていただき、クレームなどは一切受け付けておりませんのでご了承ください。
ここまで、よろしければ、こちらにサインをお願いいたします」
「はい」
サイン済みの誓約書を受け取ると、冷たい麦茶を出して、ボクはカウンターの内側に引っ込んだ。
今日の音楽はピアノのジャズにしよう。うん、ビル・エヴァンスか、これにしよう。
静かな音量で音楽を流し始めて間もなく、カウンセリングが始まった。
成瀬くんの話はこうだった;
ボクは大学2年で、大学の近くで1人暮らしをしてます。
郊外の大学で、そこの学生はほとんどが、キャンパスの周りにアパートを借りてるんです。友達や先輩もみんな近くのアパート暮らしなんで、町全体が学生寮みたいな感じっていうか。
で、何に悩んでるのかっていうとですね…
先輩が男同士でつきあってて、
2人とも先輩なんスけど、
その彼氏とつきあうことになってしまって…
でもすごく世話になってる先輩なんで、
なのに俺、本気になっちゃって…
それでどうしたらいいかわからなくなって…
あ、ああ、そうですよね、俺、何言ってんだろ…
落ち着いて最初っから話します。
あ、麦茶いただきます…ありがとうございます。
(麦茶をゴクリと飲み、はぁーと大きく息をついて、成瀬くんは再び話し出した)
大学入ってからずっと世話になってる先輩が…森(もり)先輩っていうんですけど。
高校も一緒だったんで、大学入る時、アパートも森先輩に世話してもらったんです。
サークルも、森先輩に連れてってもらって、自動車部に入りました。
で、森先輩がムチャクチャ仲いい先輩の、カオルさんっていうのがいまして。
カオルさんは俺の1コ上で、森先輩は2コ上なんスけど。
森先輩って面倒見いいし、2人とも自動車部だったんで、学年違っても仲いいんだなって思ってたんです。
けど、俺、全然知らなかったんスけど、先輩とカオルさん、実は恋人同士だったんですよ。
あ、はい。カオルさんって男です。そう、1コ上の…
そう、男なんです…森先輩も男です。
カオルさんは森先輩と同じアパートで、部屋も隣同士なんです。
先輩たちは1階で、俺は2階です。
それで、3人で飯食ったり、森先輩の部屋で飲んだり、ドライブ連れてってもらったり、よくつるんでたんです。
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