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第3話 - 4
え? ……はい、いやぁ、それが、そうなんスよ、
俺、男、大丈夫でした。
自分が男と寝るとか、マジで信じられなかったけど。ってか、カオルさん限定だと思いますけど。
男同士のセックスが凄くいいって聞いたことはあったけど、まさか自分が……
でも、マジで、本当に凄いんですね…凄すぎて…森先輩に悪いって思ってるのに、カオルさんにグイグイ来られると、俺、もう断れないんです。むしろ離れられないっていうか…
どうしちゃったんだろう俺…森先輩に知られるのが怖いのに、カオルさんとムチャクチャ抱き合いたくて、もう、苦しくて……
え?カオルさんですか?
ああ、カオルさんは、
「自分の気持ちにウソはつけない。だから、仕方ない」
って言ってます。でも、仕方ないって言ったって、ねぇ…カオルさんは、それ以上は言わないし、森先輩にウソ、つき続けるつもりだろうけど…
それじゃ何も解決しないじゃないですか。
……はい、それは。森先輩は、まだ気付いてないと思います。
周りですか?
周りも、知らないと、思います。その前から、俺たち仲良かったんで。
ああ、そうですね、
自分が自分を一番許せないのかもしれないです……
でも、なんかもう、……今さらどうしようもなくないですか?
どうしたらいいんですかね?
どうするのが正解なんでしょうか…
先生、どう思いますか?
成瀬くんは、顔を紅潮させたり青ざめたりして、最後は苦しそうだった。
それより、それ、3人物理的に近すぎて生々しいな……。
どうしたって、成瀬くんと森先輩が傷つくのは避けられない気がするけれど。
先生はこのケース、どう対応するのかな?
「成瀬くん、恋愛に、正解も不正解もないと、私は思っています。
成瀬くんは、どうなりたいですか?」
「どうなりたいか? ですか」
成瀬くんは左手を頬に当てて、深いため息をついた。
先生は柔らかい表情で、静かに成瀬くんの返事を待っている。
静かなジャズピアノの音が、沈黙を埋める。
「森先輩に、酷い思いさせるのは、絶対イヤです。
でも、カオルさんと離れたくない…」
「そうですか。
成瀬くんは、薬はご希望ですか?」
「はい。どうしても解決したいんで」
「わかりました。では、少しお待ちくださいね」
15分ほどして、先生が奥の部屋から、2つの小瓶を持って現れた。
「成瀬くん、お待たせしました。今回、2種類の薬を処方しました。
こちらが、好きな気持ちが薄れてしまう薬。そしてこちらが、いわゆる惚れ薬です。
コーヒーやお酒に数滴ずつ垂らして服用してください。
森先輩とカオルさんに、それぞれ飲ませてください。気付かれないようにね」
普段、薬の効能を説明することはないのに、珍しいな。
「先生、わかりました。
…そうか、なるほど!森先輩がカオルさんのこと好きじゃなくなれば、別れてくれますもんね!森先輩が傷つかずに済みますよね!
で、カオルさんに惚れ薬を飲ませれば、完全に俺のものになるっていう。
そういうことですよね!やってみます!」
そうか、そういうことか。そうすれば、成瀬くんの希望通りだ。納得。
成瀬くんは、生気を取り戻して、力強い足取りで帰って行った。
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