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第4話 - 3

ユキコさんの気迫に押されて、向かった先は、カツラメーカーのショールームであった。彼女はそこの社員だという。 真面目ひと筋で、学生時代は勉強漬け。綺麗な顔してるクセに、社会人になった頃から薄毛に悩んで外見に自信なく、服装に気を配ることもなかった鈴木さん。 彼女の迫力に流され、言われるままに、いくつかカツラを試着して、その場で購入したのだそうだ。 さらに、その足で美容室に連れて行かれ、細かい部分を整えてもらったのだそう。 「ついでに眉も整えられたよ。眉毛なんて切ったことなかったけど、それだけでも、ずいぶん印象が変わるものだね」 ひょいと前髪を上げて、きれいに整えられた眉を見せてくれた。 男でもドキッとするレベルだ。 もともと綺麗な目鼻立ちなので、すごく映える。こんなに変わるなんて! 「鈴木先生、すごく似合ってる!」 感動レベルだ。 カツラメーカーのユキコさんは、美容室でカットされている間も鈴木さんの横に付き、翌日はスポーツジム、その次の休日にはショッピングの約束をしたのだそう。 連れて行かれたスポーツジムへは、週3日通うプログラムが組まれ、元来まじめな性格の鈴木さんは以降ずっと定期的に通っているらしい。食事のアドバイスも受けているという。 「最初は筋肉痛が激しくてね、体がバラバラになるかと思ったよ! 2週間経った頃から効果が出始めてね。今日でちょうど3週間なんだけど、ほら、少しお腹ひっこんで来たよ」 「ホントだ!筋トレ?すごい変化だね!」 ショッピングでは、ユキコさんに連れられて行った各店で、仕事用スーツを3着、スポーツウェア、カジュアルスタイル、それに、靴もコーディネートしてもらったらしい。 「本当にすごいよ、先生!今の方が昔より、もっと、ずっとカッコいい!」 鈴木さんは嬉しそうだった。 「で、そのユキコさんとは、うまくいってるの?」 「いやぁ、それがさぁ、彼女、仕事でつきあってくれていたんだよ。 よくテレビや雑誌でもあるでしょ、変身企画。あれを、彼女の会社でもやることになって、担当しているんだって。 たまたま参加した合コンで、たまたま僕に会って、この企画にぴったりだと思ったらしい。ま、言うなればスカウトされたって感じかな!ハハハ」 「そうなの? ……でもそれって、ひどくない?鈴木先生、利用されたってことでしょ?」 「そんなことないよ。おかげで僕は、こんなに変身できたんだもの。ほとんど無料だし」 「無料?ヅラも?服も?」 「うん。スポーツジムだけは自分持ちだけどね。でも入会金は払ってくれたよ。 健康にいいし、体形も変わって来た。通うきっかけになって良かったよ。 恋人だって、できる気がしてきた。トータルで考えると、ユキコさんに出会えてよかったと思ってる」 「そうなんだ……、ある意味、運命の出会いだね!」 ボクは蘆屋先生の言葉を思い出していた。 「ハハハ そうだね。 変身後の出勤初日は、恥ずかしかったんだけど、ユキコさんが背中を押してくれてね。 会社のみんなも驚いてた。 でも、悪い感じじゃなくてね。なんていうか、喜んでくれてるみたいでさ。ちょっと照れ臭いけど、嬉しかった。それにね、最近毎日、気分が晴々してるんだ」 「よかったですね、鈴木さん」 蘆屋先生も笑顔だ。 本当にかっこよくなったよ、鈴木先生! ボクも嬉しい! (第4話 END)

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