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第7話 - 4
数日して、また石井さんがやって来た。
「蘆屋先生、先輩に例の女性のこと、聞いてみました。
洋服や健康のアドバイザーなんだそうです。僕が疑っていたような仲じゃなかった。その疑問は解けました。
でも、なぜ泊まらないのかっていう謎は、まだ解けないんですよね。何か重大な秘密があるとしか考えられませんよね……」
「それは訊かなかったんですか?」
「いえ、訊いてみましたよ。自分の部屋でないと眠れないから、だそうです」
「本人がそう言うなら、そうなんじゃないですか。そういう人もいますからね」
「でも先輩は、僕を泊めてくれたこともないんですよ?そんな、一緒に寝たくないなんて、初めてですよ」
「仲が良くても寝室は別というカップルもいますよ」
「僕は一緒に寝たいんです!」
「本人にそう言ってみては?」
「言いました!でも『またそのうち』ってはぐらかされるばっかりで……」
「そうですか……まあ。先輩は石井さんのこと、好きだと言っているのでしょう? 関係も続いているのでしょう?
だったら、何か事情があるのでしょう。焦らず待ってあげては?」
「……はい」
珍しく石井さんが肩を落としてしょげていた。
こう言っちゃ悪いけど、石井さんって明るくて元気な人だと思ってたけど、実は結構めんどくさいな。つきあってたって、家に帰ってもいいじゃないか。ボクだって、自分の部屋で寝るのが一番落ち着くもん。先輩って人も、そうなんじゃねーの?
いや、そうでもないか。
離れたくないって時も、ある……
じゃやっぱり先輩は、石井さんのこと、そんな好きってワケでもないんじゃない?
……って、こんなこと言ったら先生に怒られるか。口に出すのはやめておこうっと。
(第7話 END)
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