27 / 88

第7話 - 4

数日して、また石井さんがやって来た。 「蘆屋先生、先輩に例の女性のこと、聞いてみました。 洋服や健康のアドバイザーなんだそうです。僕が疑っていたような仲じゃなかった。その疑問は解けました。 でも、なぜ泊まらないのかっていう謎は、まだ解けないんですよね。何か重大な秘密があるとしか考えられませんよね……」 「それは訊かなかったんですか?」 「いえ、訊いてみましたよ。自分の部屋でないと眠れないから、だそうです」 「本人がそう言うなら、そうなんじゃないですか。そういう人もいますからね」 「でも先輩は、僕を泊めてくれたこともないんですよ?そんな、一緒に寝たくないなんて、初めてですよ」 「仲が良くても寝室は別というカップルもいますよ」 「僕は一緒に寝たいんです!」 「本人にそう言ってみては?」 「言いました!でも『またそのうち』ってはぐらかされるばっかりで……」 「そうですか……まあ。先輩は石井さんのこと、好きだと言っているのでしょう? 関係も続いているのでしょう?  だったら、何か事情があるのでしょう。焦らず待ってあげては?」 「……はい」 珍しく石井さんが肩を落としてしょげていた。 こう言っちゃ悪いけど、石井さんって明るくて元気な人だと思ってたけど、実は結構めんどくさいな。つきあってたって、家に帰ってもいいじゃないか。ボクだって、自分の部屋で寝るのが一番落ち着くもん。先輩って人も、そうなんじゃねーの? いや、そうでもないか。 離れたくないって時も、ある…… じゃやっぱり先輩は、石井さんのこと、そんな好きってワケでもないんじゃない? ……って、こんなこと言ったら先生に怒られるか。口に出すのはやめておこうっと。 (第7話 END)

ともだちにシェアしよう!