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第9話 - 4

翌週、飲みに行こうと圭太くんに誘われた。 落ち着いて話せる店を知っているか、というので、蘆屋先生のバーに連れてきた。 ……ってボクほとんど飲みに行かないから、他に知らないんだよなー。 それに、こないだの相談のこと話したいんだろう。蘆屋先生も一緒ならちょうどいいよね。 「先生、こんばんは~ 今日は飲みに来ました」 「いらっしゃい、圭太くん、ルイ君。何にする?」 「とりあえずビールお願いします。ルイもビールでいい?」 「うん」 小さく乾杯してグラスに口を付ける。 冷えたグラスにきめ細かい泡。のど越しが気持ちいい。 今日の音楽はショパンか。 「先生に言われたこと、考えてみたんだけど」 「うん」 「好きなところっていうのは、すぐ思い浮かぶんだよね。  でも、話したい事とか、一緒に行きたい所とか、一緒にやりたい事っていうのが、広がらないんだ。トモちゃんもユミちゃんも。  例えばメッセージ送るとするじゃん、ラインとか。  何て送る? って考えたら、すげー微妙なの。  飯食おうとか、作ってとか?  それだけ。あと他に思い浮かばないんだよね。  休みの日に何したいかも考えたんだ。  そしたらね、僕、やっぱサーフィン行きたいんだわ。  あと、カイとドライブ」 「へえ、そうなんだ」 「うん。  トモちゃんは美人だし、ユミちゃんは可愛いから、どっちと付き合えたとしても、多分みんなに自慢してーだろーな。  でもさぁ、僕がしてあげたい事が思い浮かばないんだ。  彼女たちの何を知りたいか、もさぁ……  悪いけど、どんな飯作ってくれるかな、とか、うん、だいたいそんくらい。  そう考えてたら滅入ってきた」 「へえ」 (圭太くん、そんな事で滅入るんだ? ちょっとウケる!←言えないけど!) 「結局さ、カイと遊んでるのが一番楽しいんだよ、今は。  って、気づいた」 「ふうん、そっかぁ。  え、じゃあどうするの?」

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