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第9話 - 5

「んー、だから、今度カイをサーフィンに誘ってみようと思う。  実はまだサーフィンは一緒に行った事ないんだ。  今まで1人で行ってたから」 「へえ、いいね」 「前に『やってみたい』って言ってたし。  ……そういうの、変か?」 「変じゃないと思うよ」 「ルイは彼女とか、つくんないの? 聞いたことねーけど」 「うん。今はいいかな」 「休みの日とか、何してんの? 寂しくね?」 「うーん別に。ピアノ弾いてたら一日終わっちゃうし。あとは本読んだり映画見たり。  ああ、それと、結構ここでバイトに入ってるよ」 「へえ。ルイって、付き合ったこととか、あるの?」 「うん……。高校の時だけどね」 「同級?」 「……年上」 「別れたんだ」 「うん」 「まだ好きなの?」 「いや、それはない。  楽しかった事もあったけど、最後は結構しんどかったから。  ボク的には今はひとりでいるのがいい。  恋人がいればいいってものでもないと思うよ。またいつか好きな人ができたら、付き合うかもしれないけど。  それまでは無理につくらなくていいかなーって思ってる。今楽しい事があるなら、その方がいいじゃん」 「そっか。そうだな」 「そうだよ。  海斗くんとサーフィン、楽しみだね」 「おお、そうだな。ルイも行きたい?」 「んー、今はいいかな。まあいつか気が向いたら連れてってよ。  っていうかさ、圭太くん、その女子どっちにもまだ告白してないんでしょ?」 「お、おう」 「告白する前に振るとか、結構ウケるんだけど。っていうか、ふたりは海斗くんの事が好きなんだろ?考えるまでもなくすでにフラレてるんじゃん」 「え? あははははは、それもそうだな! ルイ君ハッキリ言うよね! 勝手にフッたみたいにすり替えてたわ、オレって失礼だよなあ」 「そうだよ」 最後は2人して大笑いになった。 蘆屋先生はカウンター仕事をしながらニコニコ聞いていた。 「じゃ、稲川 圭太くんのカウンセリングはひとまず終了ということで、いいかな?」 「ああ、ルイ君が予約担当だっけ。そうだね、もういいや。色々聞いてくれて、ありがとな。すげースッキリした!   先生も、ありがとうございました。  僕、恋愛相談って言って来たのに、全然恋愛じゃなかったですね、なんかすみません! また何かあったらお願いします」 「ええ、いつでもまた来てくださいね。相談でも飲みにでも。  恋愛って、落ちる時には落ちるもの。恋愛自体が目的なワケではないですからね。自分らしく人生を楽しむ事の方が大事だと思いますよ」 「ほんと、そうですよね!」 店内に『子犬のワルツ』が流れてきた。 圭太くんって見た目はカッコいいけど、中身は子犬だな。 翌日、圭太くんからメッセージが届いた。 『今週末、カイとサーフィンに行く事になった!ルイもやりたくなったらいつでも言ってくれ』 圭太くん楽しそうだ。 よかった。 (第9話 END)

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