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第11話 - 2

その階段は確かにすごく長い。見下ろすだけで足がすくむレベルだ。上から下まで転げ落ちるなんて恐ろしすぎる。 圭太くんと2人、階段を降り切ったところにある駅員室を訪ねた。 運よく、海斗くんを助けてくれた駅員さんに会うことができた。 「ああ、昨日の事故ね。大学生の男の子が階段落ちた件でしょう? ちょうど今頃の時間ですね。雨も降っていなかったのに、足が滑ったのかな? ずいぶん上から転がり落ちてたけど、大丈夫でしたか?」 「鎖骨と肋骨が折れたけど、意識とかは大丈夫でした。対応ありがとうございました」 「あいつ、足が滑ったんじゃなくて、誰かに背中を押されたらしいです。逃げてった奴の特徴とか覚えてませんか?」 「ん? いや、1人で転んでいたよ? 思い違いじゃない?」 「え?」 「ちょうど、ほとんど人通りがなくてね。彼のほかには階段の一番下辺りに女性が2人降りて来ていただけで、階段の上の方は彼1人。その3人しかいなかったですよ。 まあ、命に別状なかったようだし。 将棋倒しにもならかったのが不幸中の幸いかもしれませんね」 え? 海斗くんを突き落とした人はいなかった、ってこと? ゾっとしてボクと圭太くんは顔を見合わせた。その日の聞き込みはそれで終了となった。 翌日は蘆屋先生のところでバイトだった。 先生に海斗くんの事故の話をすると、先生が神妙な顔になる。 少し前に圭太くんが相談に来たから、先生も海斗くんのことは聞き知っている。 ついでに学食での話もしてみた。 聞き終わって最初の先生の言葉は意外なものだった。 「下痢ですか」 え、そこ? そこ重要なんですか先生? ボクは拍子抜けして笑い出しそうになったけど、先生の表情は真剣だ。 「急いで海斗くんと圭太くんに連絡はとれますか」 「はい」 「食べものに気を付けるように言ってください。お見舞いや差し入れでもらった食べもの、特に手作りのものは決して口にしないように。今はとりあえず、それだけ急いで伝えてください」 先生の言い方がいつになく強い。 ボクは言われた通り、すぐにラインで送った。

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