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第11話 - 5

ユミちゃんと圭太くんとボクの3人で海斗くんを訪ねることになった。 「海斗って幽霊とか宇宙人の話が嫌いでさ、そういう話イヤがるの。 だから駅員さんに聞いた話、オレまだ話してないんだ。ルイ話した?」 「いや、ボクもまだ」 「駅員さんの方が見間違えてたかもしれないしな」 そんなことを話しながら、病室に着いた。 「よっ海斗! 具合はどう?」 ドアを開けると、ベッドの脇の椅子にすらっとした女の人がいて、驚いたようにこちらを振り返った。 「あれ、トモちゃん来てたんだ」 圭太くんが声をかけた。これが圭太くんが好きだと相談に来ていた美人の先輩って人か。 トモちゃんと呼ばれた女性は慌てて立ち上がった。 「ああ、私もう帰るところだから。海斗くん、またね」 きまり悪そうな笑みを浮かべながら小さく会釈してバッグを持つと、急いで去ろうとする。 ボクたちの方をちゃんと見ようともしない。 ボクは初対面だけど、圭太くんやユミちゃんの話では仲が良いって聞いてたけど。 ユミちゃんも妙な顔をしている。 病室に残されたボクたちの間に数秒、妙な空白ができた。 その間をかき消すように、海斗くんが口を開いた。 「圭太、今日も来てくれたんだ。ルイ君もユミちゃんも一緒になんて珍しいね」 「そう、たまたま学食で会ってついてきちゃった! 海斗さん、どう? 痛む? お茶とお菓子買って来たヨ~ 一緒に食べよう〜」 「ありがと。って、ユミちゃんお茶しに来たのか」 「そんなことないよぉ~」 ユミちゃんが子供っぽくぷーっとふくれてみんなが笑い出す。空気がなごむ。 けど海斗くんは顔色がよくない。 途中コンビニで買ったペットボトルのお茶とプリンを出した。 「海斗、ハイ差し入れ。みんなでお茶しようぜ」 「おお、ありがと」 ボクは海斗くんに先生の薬を飲ませなければならないことを思い出した。 「あ、海斗くん左手、力入らないでしょ。ボク開けるよ。プリンも食べるよね?」 ボクはみんなに背中を向けて、素早くポケットの小瓶から数滴、ペットボトルに垂らして渡した。これでひとまず任務完了。 なんとなくサイドテーブルに目をやると、小さなカードが添えられた包みが目に入った。 そういえば「手作りの食べものに気をつけろ」って先生が言ってたな。これか。 海斗くんに「食べるな」って言わなくちゃ。 なんて言えばいいだろうか…… それからボクらは学校の様子を話したり、授業ノートのコピーを渡したりした。 「ねぇ海斗さんさぁ、背中押した人ってどんな人だったの?」 突然ユミちゃんが言いだした。 場の空気が一瞬止まった。 そこ触れちゃうんだ。この子天然か。 ボクと圭太くんは一瞬目が合った。思わずゴクリと唾をのむ。 海斗くんは深く息を吐いたあと、意を決したように口を開いた。 「実はさぁ、まだ誰にも言ってないんだけど。ホントは、誰もいなかったかもしれないんだ」 背筋がゾクリとする。 「え、それって、あ、あ、足が滑ったとか?」 声が裏返りそうになってしまった。 「いや、押されたのは確かだと思う。背中に手型のアザが残ってたから。見る?」 海斗くんがベッドの上でもぞもぞして、パジャマを引き上げようとする。 圭太くんがさっと手を伸ばして手伝った。 「やだ、怖い~」 ユミちゃんがか細く泣きそうな声を出す。 ボクもちょっとこういうの、怖い。 「ホントだ、打ち身みたいなアザができてるな。手かどうかは分かんねーけど」 圭太くんが言った。 確かに赤黒く、内出血した手のひらくらいのアザができている。 ボクはゾッとして言葉も出ない。 「海斗。実はオレとルイで次の日、目撃情報の聞き込みに行ってきたんだ。  そうしたら駅員さんが、海斗は1人で転げ落ちた単独事故だったって言うんだよ。見間違えか記憶違いだろうけど」 「マジか……」 海斗くんは少しうつむいて顎をいじって何事か考えている様子だ。 ため息をつくと、思い切ったように顔を上げた。

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