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第11話 - 6
「オレって、そういうの信じない方じゃん。でも、どう考えてもおかしいんだ。事故の瞬間の事を何度も何度も思い出そうとすんだけど、周りに人がいた記憶がないんだ。
チラッと上の方に黒い影みたいなのが見えたから、それで、誰かすげー勢いで走って逃げたんだろうなって、自分に言い聞かせてた。医者にもそう説明したら、納得してたし。
……駅員さん、誰もいなかったって言ってた?」
「……うん」
今度はボクが口を開いた。
「海斗くん、ボクのバイト先知ってたっけ?
ボクはカウンセリングの受付なんだけど、そこの先生がそういうの分かる人でさぁ。ボク、駅員さんに聞いた事を先生に話したんだ。海斗くんが幽霊とか宇宙人の話キライだって聞いたから言わないでおこうと思ってたんだけど。
退院したら先生にお祓いしてもらってよ。
圭太くんとユミちゃんと、三人で店に来てって言ってた」
圭太くんとユミちゃんも真剣な目で海斗くんを見つめた。
「わかった」
神妙にうなずく海斗くん。
ああよかった、すんなり聞いてくれた。
「でね、海斗くん。退院するまで気をつけて欲しいことがあるんだ」
「何?」
「食べものに気をつけて。特に、差し入れでもらったものとか」
「え、さっきプリン食っちったけど」
「あっそれはそうなんだけど……、アレだよ、手作りの物とか」
「手作り? それならさっきトモちゃんがお見舞いにクッキー焼いたって持ってきてくれたぞ。ホラそこにあるやつ」
「ああ、そういうヤツ! 海斗くん、それ食べちゃダメ!」
圭太くんが口を挟む。
「おいおいルイ、何言ってんだよ。トモちゃんだぞ? トモちゃんの手作りクッキーなんて大丈夫だろ」
「でも先生がそう言ったんだ。ねえ海斗くん、いい? ボクの言うこと聞いてくれる?」
「うん、わかった。じゃルイ、それ持って帰って」
「うん」
「おいおい海斗まで…… あルイ、ちょっと待てよ。それならオレが食いたい!」
「ダメだよ圭太くん! 圭太くんも気をつけろって先生言ってたよ。
とりあえずボクが先生に渡してみるよ」
「マジかよ。お前が食うつもりだろ。トモちゃん美人だったろ?気に入っちゃった?」
「こんな時に何言うんだよ圭太くん。ボク真剣だよ」
「はいはーい、分かりましたー」
圭太くんが口をとがらせる。あんまり急にムキになるから、みんなつい笑ってしまった。
ユミちゃんが口を開いた。
「海斗さん圭太さん。私、ルイくんと行きたい所があるから、先帰るね」
え? そうなの?
「なにユミちゃん~、オレたちは『さん』なのにルイは『くん』なんだ~」
圭太が突っ込む。
「うん! ルイくんは、なんか可愛いから!」
「なにそれ、ウケる。
そっか、今日はありがとな。ルイ君も、ありがと。先生によろしく言っといて。退院したら行くって」
ボクとユミちゃんは、手を振って病室を出た。
「ルイくんごめんね、突然」
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