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第11話 - 7
ユミちゃんが伏目がちに言った。
「ちょっと話したい事があってさ」
「いいよ。どこ行くの?」
「どっかカフェでも入らない?」
「ああそれじゃボクのバイト先でもいい? まだバーのオープン前でお客さんいないし、ゆっくり話せるよ。先生に早くこのクッキー渡したいし」
「え、いいの? 私もルイくんの先生に会ってみたかったの!」
そういうわけで、蘆屋先生に連絡を入れて店にやって来た。
「先生、こんにちは」
先生はいつも通りにこやかに迎えてくれた。
ボクとユミちゃんはカウンターに隣り合って座った。
ユミちゃんは店内をキョロキョロ見まわして物珍しそうにしている。
「素敵なお店だネ。日本じゃないみたい」
「でしょ。ユミちゃん、何か飲む? コーヒーも紅茶も美味しいよ」
「じゃコーヒーお願いします」
ボクが立ち上がろうとすると蘆屋先生が軽く手を上げて
「今日は私が淹れますよ」
と言ってくれた。先生のドリップ、美味しいんだよね。
「先生、ボクもコーヒーお願いできますか」
「はい」
ケトルの細い口からドリッパーにお湯が注がれると、ふんわりきめ細かい泡が立ち芳ばしい香りが広がる。外側からぐるり、次第に内側へと美しい円を描きながら注がれる。泡の立ち方がとてもきれいで、つい見惚れてしまう。
コーヒーの香りで落ち着いたのか、ユミちゃんが話し出した。
「ルイくん、トモちゃんに会ったの今日はじめてだよね。どう思った?」
「どうって……?」
「すごい美人でしょ! 男の人なら誰だってトモちゃんのこと素敵だと思うよね!」
「うーん、そう……?」
「みんなそうだよ。海斗さんも圭太さんもトモちゃんが好きだし。私もトモちゃんはすごくきれいで素敵だと思うし!
私、中高が女子校だったの。だから女を見る目はあるの。そして綺麗なひとが好き。だから、トモちゃんのこともすごく好きだったんだ」
「へえ」
「私、海斗さんが好きなの。お兄ちゃんみたいで。
ウチのお父さん男子校の先生でね、小さい時から学生さんが家に来て可愛がってもらってたんだけど、そのせいかお兄ちゃんみたいな人、好きなの! 圭太さんもお兄ちゃんみたいだけど、ちょっと雑いじゃない? 海斗さんの方が優しいよね。
トモちゃんね、最初の頃『ユミちゃんは海斗くんの事がホント好きね! ユミちゃんは可愛いからお似合いよ! 応援してるね!』って言ってくれてたの。
けど、ホントはトモちゃんも海斗さんの事が好きなんじゃないかな。応援するとか言ってたけど色々おかしいもん。
お見舞だって、私には『ユミちゃんと一緒に行きたいから、行く時は絶対言ってね』って言うの。なのにさっき1人で行ってたよね。ちょっと感じ悪くない? 態度もなんだか変だったし。
今までトモちゃんのこと好きだったけど、最近チョットね、前みたいに素直になれないの」
「そうなんだ」
「私のこと応援してるとか、絶対ウソだと思う」
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